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リリカルなのはクロスSSその122

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/20(火) 23:58:23.71 ID:6y8Wflxz
ここはリリカルなのはのクロスオーバーSSスレです。
型月作品関連のクロスは同じ板の、ガンダムSEEDシリーズ関係のクロスは新シャア板の専用スレにお願いします。
オリネタ、エロパロはエロパロ板の専用スレの方でお願いします。
このスレはsage進行です。
【メル欄にsageと入れてください】
荒らし、煽り等はスルーしてください。
本スレが雑談OKになりました。ただし投稿中などはNG。
次スレは>>975を踏んだ方、もしくは475kbyteを超えたのを確認した方が立ててください。

前スレ
リリカルなのはクロスSSその121
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1327161388/l50

規制されていたり、投下途中でさるさんを食らってしまった場合はこちらに
リリカルなのはクロスSS木枯らしスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6053/1257083825/


まとめサイト
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/

避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/

NanohaWiki
ttp://nanoha.julynet.jp/

R&Rの【リリカルなのはデータwiki】
ttp://www31.atwiki.jp/nanoha_data/


145 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2012/11/26(月) 07:15:39.78 ID:HdJJuXh1
『地球軍第17艦隊による異常行動を確認。現在、四十四型による偵察活動を継続中』
『異常行動? 何をしているの』
『艦隊旗艦、ニヴルヘイム級「クロックムッシュU」及び「マサムネ」による、第97管理外世界への対地砲撃を確認しました』

一瞬、思考が停止する。
ティアナは、何と言ったのか。
地球軍が、何をしたと。
何を、攻撃したと。

『・・・確認する。地球軍が、地球を攻撃しただと?』
『はい。ユーラシア大陸全土に対し、主砲による砲撃を加えています・・・マサムネ、戦略級核弾頭搭載巡航弾発射。着弾まで3秒』
『随伴艦艇群からも砲撃が。巡航艦艦首波動砲による砲撃を確認、北米大陸西岸部に着弾。周囲700kmは壊滅状態』
『アフリカ大陸全域、計25箇所での核爆発を確認。R戦闘機群、軌道上からの波動砲による地上掃射を開始』
『落ち着いて・・・落ち着いて下さい!』
『誰でも良い、医療魔法が使える奴は居ないか!? 鎮静効果の在る奴だ!』

何か、騒ぎが起こっている様だ。
どうやら、誰かが錯乱しているらしい。
何故かは解らないが、先程の戦闘で精神的な負荷が限界を迎えたのだろうか。

『ユーラシア大陸東部、R-9Sk2部隊による地表への大規模焼却が進行。中間圏界面でのデルタ・ウェポン発動を確認、宙間核融合反応強制励起を観測。ロシア東部、中国、朝鮮半島全域が炎に覆われています』
『マサムネ、偏向光学兵器照射。樺太島の北端に着弾、列島を南下しつつ掃射中』
『よせ、暴れるな! 落ち着くんだ、一尉!』
『手が付けられない! 誰かバインドを!』
『欧州全域、宙間巡航弾18基の着弾を確認。核爆発発生を観測』
『南米大陸、陽電子砲着弾。続いてオーストラリア大陸への着弾を確認』

何故だ。
第17異層次元航行艦隊は何故、この様な意味不明の行動に出たのか。
自身等の故郷を破壊して、何の意味が在るというのか。

『故郷ね・・・』
『何か?』
『北極圏および南極大陸に置いて核爆発を観測。周辺海域での大規模な海面隆起を確認、津波発生』
『奴等、本当にそう思ってるのかな』

セインの意識を読み取り、キャロは成程と納得する。
こういう時、意識共有は実に有用だ。
相手の真意を、余す処なく理解できる。
どちらかが隠そうと、或いは誘導を試みない限り、擦れ違いなど起こりようも無い。

『第17艦隊、対地攻撃中断。汚染艦隊との交戦を開始』
『あの21世紀の地球が、彼等の故郷である22世紀の地球と繋がっている訳ではありませんからね。違うと判断したからこそ、彼等は攻撃を実行した』
『もし繋がっていたとして、奴等が攻撃を躊躇うかどうかは怪しいけどね。でも問題は、そんな事をして何の得が在るのかって事だ』

正に、其処が問題である。
第17艦隊が上層部に対する叛乱を起こした事は間違い無いであろうが、だからといって21世紀の地球を攻撃する道理が解らない。
これまでに確認された第17艦隊からの攻撃を見る限り、既に原住民は全滅に近い被害を受けている事だろう。
違う時間軸であるとはいえ、自らの祖先に当たる人々を虐殺して、何が得られるというのか。

『独立表明の心算でしょうか。第17艦隊が独自の文明圏となる、その為の意思表示の可能性は』
『誰に対してそんな事するのさ。それで、私達はもう地球とは何の関係も在りません、これから仲良くしましょう、何て言うとでも?』
『在り得ませんね』
『それ以前に、曲りなりにも地球軍の一員であった彼等が、そんなセンチメンタルな理由で無駄な攻撃行動を起こすとは思えない。何か別の理由が在る筈です』

圧縮念話を交しつつ、外殻上に腰を下ろしていたセインが立ち上がる。
加速した意識の中、その動きは酷くゆっくりと感じられるが、体感時間に関する制御を少し弄るだけで違和感は消えた。
そうして、特に新たな念話を交すでもなく次の言葉を待っていると、簡単な柔軟体操を終えたセインが首を捻りつつ支局艦艇を指す。

『如何でも良いけど、早く行かない? 奴らより先にバイドの中枢を抑えなきゃならないんでしょ。今から行ってもキツイと思うけど』

146 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2012/11/26(月) 07:16:11.24 ID:HdJJuXh1
言葉を紡ぎ終えるなり、彼女は外殻を蹴って宙へと躍り出た。
飛翔魔法には不慣れと聞いていたが、泳ぐ様にして飛ぶ彼女の姿は中々に様になっている。
加速し支局艦艇へと向かう彼女の背を見送り、キャロは傍らのエリオへと視線を移した。
彼は宙を見上げたまま、その場を離れようとはしない。
エリオは、キャロが動くのを待っているのだ。
そんな彼の様子を横目に眺め、微かに息を吐くと、彼女もまた外殻を蹴って宙へと浮かび上がる。

『ライトニング02、これより第2支局に・・・』
『総員、耐衝撃態勢!』

その、直後。
ティアナからの警告と同時、視界が白く染まった。
衝撃が来ると理解したのも束の間の事、何ひとつとして対策を実行に移せない儘、全身を襲った破壊的な力の壁に思考を粉砕される。
麻痺する聴覚、背面に衝撃。
エリオが自身を受け止めてくれたのだと、すぐに理解する。
全身を外殻へと打ち付け意識を失う事態こそ避けられたものの、閃光により視覚を、轟音により聴覚を奪われたキャロ。
だが、彼女はそれらの障害を無視し、念話の傍受に意識を傾ける。
その傍ら、エリオより発せられる圧縮念話。

『今のは何だ! 艦艇、詳細を!』
『第1支局より総員、先程の閃光は砲撃だ! 波動粒子による砲撃、第12層を貫通し天体中枢部へ!』
『何処だ、視覚が麻痺して何も見えない!』
『総員、本艦からの映像を転送する。目標までの距離、約20000・・・警告! 第12層崩壊地点よりR戦闘機の複数侵入を確認!』

未だ回復しない自身の視界内ではなく、意識中へと直接展開される並列視界。
其処には第12層、先程の砲撃により破壊された地点から空洞内へと侵入する、複数のR戦闘機が写り込んでいた。
見覚えの無い外観、機体上部および後部へと突き出した柱状構造物、下部へと延びる2基のスラスターユニットらしき部位。

『目標補足。「R-9B STRIDER」全領域巡航型試作戦略爆撃機。T&Bエアロスペース製、試作型純粋水爆弾頭搭載宙間巡航弾「XACM-508 BalmungU」による戦略級核攻撃能力を保有』

戦略爆撃機。
その機種に対し思う処が在るのか、エリオが不審を覚えている事を感じ取るキャロ。
そうして、彼が許可する範囲での意識共有を深化させると、すぐに疑念の内容が判明した。
何故、爆撃機が人工天体中枢部への侵入を試みるのか。
より突入に適した機種など幾らでも在るだろうに、宙間巡航弾による超長距離攻撃に特化した爆撃機を天体内部への突入戦力に選んだ理由とは何か。
内部に存在するであろう汚染艦隊を攻撃する為か、或いは別の目的が在るのか。
エリオは、それらの点を訝しんでいるのだ。
そして更に、新たな疑念が圧縮念話を介して共有される。

『試作型というのは本当? 正確な情報なのかしら』
『はい。R-9Bは超長距離単独巡航を目的として試作された機体であり、極少数が試験的に前線へと配備された記録こそ存在しますが、大量生産されたという記録は在りません』
『それも疑問ではあるけれど・・・クラナガンの戦闘に於いて、類似機体が確認されているの。確保したパイロット達の証言から、機体名も判明しているわ』
『何だ?』
『「R-9B3 SLEIPNIR」よ』

念話を交す間にもR-9Bの一団は加速し、瞬く間に天体中枢部を目掛け飛び去った。
その全貌が意識内より消えて失せた事を確認し、並列視界を閉ざす。
念話では、更に問い掛けが続いていた。

『そのR-9B3とやらの情報は「Λ」が有する記録には残されていないのか』
『確認済みです。全領域巡航型戦略爆撃機開発計画は既に、完成形であるR-9B3の戦線配置を以って完了しています』
『試作機には、量産型で除外された特殊な機能でも在るのか』
『該当する記録なし。R-9B3はR-9Bの正式な上位互換機であり、量産型が試作型に劣る点など何1つとして在りません』
『なら何故、そんなガラクタを突入させたんだ。地球への攻撃といい、第17艦隊は気でも触れたのか?』
『そうとは限らない』

割り込む念話、聞き覚えのあるそれ。
キャロ個人としては決して好ましい訳ではないが、現状に於いてある程度は有用であると判断できる人物。
狂気に侵され、狂気を是とした科学者、ジェイル・スカリエッティ。

147 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2012/11/26(月) 07:16:50.23 ID:HdJJuXh1
『あの部隊が第17艦隊所属であると証明する情報は無い』
『つまり?』
『あれが例の「増援」という可能性も在る、そういう事だな』

スカリエッティの発言に対する応答に、それを認識したキャロの意識中へとノイズが奔る。
焦燥を示すそのノイズは、瞬間というにも満たない極めて僅かな時間ではあるが、確かに彼女の意識を埋め尽くした。
更に加速される思考、密度を増す念話。

『・・・地球軍空母の位置は把握できたのか?』
『いいえ、未だ捕捉できず』
『第17艦隊は既に真実を知っているんだから、増援と接触したところで同士打ちが始まるだけじゃないの?』
『決め付けるのは早計だわ。バイドの殲滅まで行動を共にして、その後に排除へ移行する事も・・・』
『全勢力の殲滅を担う増援艦隊の戦力が、第17艦隊のそれに劣るとは考え難い。そして、第17艦隊が戦力の5割を失っている現状を考えれば、彼等が増援艦隊との共闘を選択する可能性は低いでしょう』
『できるだけ多数の勢力とぶつけて疲弊させ、其処を一気に叩くという事か』
『いえ、他勢力を撹乱に用いて、艦隊の被害を抑えるといった方が正しい。増援艦隊の戦力に対抗し得る勢力は、現状では第17艦隊を除けば2つです』

増援部隊に抗し得る勢力。
その言葉の指す処は、正確に理解できる。
だが、それは決して愉快な内容ではない。
意識中に奔る不満を示すノイズを無視し、キャロは念話を発する。

『私達とバイド・・・いえ、「Λ」とバイドですか。第17艦隊は、既に「Λ」の存在を知り得ているのですか?』
『気付いていると考えた方が妥当だね。送り付けた情報からそれ位は察しているだろうし、何よりメテオールに「Λ」そのものを捕捉されているしね』
『それも計算の内でしょ? 「Λ」が増援艦隊に抗し得る存在であると、連中に売り込んだって訳だ。中々にやり手だね、ノーヴェ』
『アタシ達が発生させた艦隊との交戦を通じて、共闘はできずとも利用はできると判断しただろう。その証明に、一時的にとはいえニヴルヘイム級を行動不能にしてやったんだからな。こっちは奴等の戦略に乗じて、増援艦隊を根こそぎ潰すだけだ』
『バイドは? まさか、放っておくの?』

セインの問い掛け同様、キャロもまた疑問を抱いていた。
第17艦隊がバイドと増援艦隊の相打ちを狙っているというのなら、バイド中枢の制圧作戦はどうなるのか。
仮に、いずれかの勢力により、バイドが制圧されたとしよう。
状況は第17艦隊と増援艦隊による全力戦闘、それに巻き込まれ崩壊する次元世界という、最悪の局面を迎える事となる。
如何に「Λ」という切り札が在るとはいえ、次元消去弾頭を起爆されてしまえば其処で終わりだ。
異層次元航行能力を有しない次元世界の各勢力は文字通り消滅し、後は何処とも知れぬ空間にて無数の次元を巻き込んでの、地球軍同士による殲滅戦が繰り広げられる事だろう。

では、セインの言葉にも在る通り、バイドを放置した場合はどうか。
何らかの要因により中枢の制圧に失敗し、バイドに充分な時間を与えてしまったならば。
「R-99 LAST DANCER」の制御中枢を完全に掌握したバイドは、全能たる「群」としての存在を維持しつつ、同時に比類し得るもの無き絶対的な「個」としての存在へと変貌を遂げる事となる。
そうなれば最早、バイドに抗い得るものなど存在しない。
R-99を中枢とする模倣されたRの系譜、或いは「TEAM R-TYPE」により生み出された数々の技術を用いて創造される新種のバイド群が、あらゆる次元を埋め尽くす事だろう。
バイド中枢は絶対的存在たるR-99をハードウェアとして獲得する事で無敵の「個」となり、中枢である機体そのものを狙った処でそれを撃破し得る可能性は余りにも低い。
あらゆる存在を自身と同等の次元にまで引き摺り下ろし、同一次元の内に存在し得る最大にして最強、最上にして最悪の暴力で以って殲滅する、具現化した悪意と攻撃的概念の結晶。
認識すら出来ぬ塵芥に等しい存在も、人智を超えた神にも等しい存在も、平等に自身と同一の次元へと固定してしまう、悪魔の機体。
そうして真正面から、対象の全てを否定し、破壊し、蹂躙し、消去する。
そんな存在に、どう抗えというのか。

『このままじゃ増援に殺されるし、バイドがR-99のシステムを掌握すればそっちに殺される。一体、どっちがマシなのさ』
『進むも地獄、退くも地獄か。個人的には、地球軍を相手取る方がまだマシに思えるが、どうなんだ?』

とても難しい問題だ。
どちらを選んでも、その後には高確率で破滅が待つ。
だが、それは次元世界に限っての話ではない。

148 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2012/11/26(月) 07:17:37.03 ID:HdJJuXh1
『だから、奴等の尻を叩いてやるんだ。第17艦隊の尻を』
『・・・説明してくれ』
『このままバイドを始末しちまったら、奴等は増援艦隊に嬲り殺しにされちまう。だからR-99の破壊を可能な限り遅らせて、バイドが別のハードウェアに逃げる為の時間を稼ぐ心算だろう。要は増援艦隊の攻撃から、ある程度バイドを護ってやるのさ』
『皮肉な話だ』
『他に手は無い。ハードがR-99でなければ始末できる可能性も在るし、何よりバイドの抵抗はより激しくなるだろうから、増援艦隊に対して相当な出血を強いる事が出来るだろう』
『我々はR-99に替わるハードを攻撃しつつ、天体外部では増援艦隊に攻撃を仕掛ける、という事で良いのか?』
『外部の事は混成艦隊が頑張ってくれているし「Λ」の支援も在るから任せても大丈夫だろう。アタシ達は此処で、徹底的に戦場を引っ掻き回すだけだ』
『具体的には?』
『R-99を破壊した後、増援艦隊所属戦力の攻撃からバイドを護る。状況をバイドと第17艦隊の優位に整えてやって、増援艦隊と真っ向からぶつからせるんだ。そして、増援艦隊が有する次元消去弾頭の破壊を確認した後にバイドを叩き、続いて疲弊した第17艦隊を始末する』
『・・・単純明快だけど、随分とハードだね』

無茶苦茶な話だとは思いつつも、他に手は無いと自身を納得させる他なかった。
バイドによるR-99の制御中枢掌握を妨害しつつ、増援艦隊の攻撃からバイドを護りつつ三者を疲弊させ、最終的に第17艦隊を含む全ての敵対勢力を排除する。
事が上手く運ぶとは、到底思えない。
だが、やるしかないのだ。

『異層次元航行能力を有するバイドが1体でも残っていれば、次元消去弾頭を起爆しても意味は無い。増援艦隊にせよ第17艦隊にせよ、バイドを殲滅しない限り状況の進展は望めない』
『だからバイドを護りつつ地球軍を疲弊させよう、って訳ね。叩く順番を間違えたら、その時点でお終いじゃない』
『そうならない様に、可能な限り速やかに天体中枢へと向かおう。さっきのR-9Bはメテオールや他の第17艦隊所属機に始末されるだろうけれど、不測の事態も在り得る』
『空間情報の再解析が完了しました。変異した本局艦艇からの干渉は続いていますが、短距離ならば艦隊を転移させることも可能です。状況を確認しつつ数回に分けて転移し、一気に中枢へと突入します』

ティアナからの念話が届くや否や、周囲の空間を埋め尽くすフォース、その全てが一斉に青白い光を放ち始める。
フォースを触媒とする魔力増幅だ。
本局艦艇からの干渉を無効化しつつ、更に連続で短距離転移を実行する為には、想像を絶するまでに大量の魔力を要する。
必要量の魔力を短時間の内に確保する為、フォースが有する魔力増幅機構を利用しているのだ。
フォースの周囲へと集束した青白い光の粒子は徐々に拡散し、周囲の艦艇から機動兵器、魔導師にまで纏わり付いてゆく。
この分ならば、転移実行まで2分といったところか。

『支局まで行く必要は無いかな。何人かで集まって、周囲警戒をしておこう。転移直後に交戦状態へ突入する事も在り得る』

ストラーダを右腕へと携え、再生した左腕の調子を確かめるかの様に、掌部を握っては開く動作を繰り返すエリオ。
その様を横目に、キャロは自身のデバイス、ケリュケイオンの自己診断プログラムを起動する。
診断は数瞬の内に完了、異常なし。
そして、移動を促すエリオの念話に対し無言のまま頷く事で答え、キャロは移動を開始すべく飛翔魔法を発動させる。

『フリードを此処に呼ぶ。ヴォルテールは艦隊側に・・・』
『総員、警戒。第2空洞に於いて空間情報の不一致を観測。当該個所の調査を開始』

ノーヴェからの警告。
「Λ」により展開される並列視界、第2空洞内部の映像。
新たに発生した「四十四型」戦闘機より転送された光学情報だ。

『悠長だな。フォースなり何なり、目標座標に発生させれば済むんじゃないのか』
『目標周辺空間への干渉ができない。空間歪曲って訳ではないみたいだが・・・』
『ノーヴェ?』

149 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/11/26(月) 17:49:02.81 ID:0eXaBjT1
うひょー来てた支援

150 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2012/11/26(月) 19:59:55.95 ID:HdJJuXh1
途切れる念話、訝しげにノーヴェの名を呼ぶセイン。
同時に、並列視界へと映り込む、青い光。
揺らぐ視界、拡大表示される発光源。
其処に、それは居た。

『・・・嗚呼、畜生!』



集束する波動粒子の光の中、全長15mにも達する砲身を構えた人型機動兵器。



『構えろ!』

瞬間、視界の全てが白光に埋め尽くされる。
全身を襲う衝撃、意識を蝕む異音。
それらが2秒にも満たぬ内に消え去った後、視覚を回復したキャロは周囲を見回す。
特に変化が在る様には見受けられない。
だが何が起きたのかについては、正確に理解していた。
短距離転移を強制実行し、敵の砲撃を回避したのだ。

『くそ、今のは危なかった!』
『短距離転移を強制実行した。大した距離じゃないが、奴の砲撃を躱すには充分だったか』
『砲撃? やっぱり砲撃を受けたのか、アタシ達は?』
『馬鹿を言うんじゃない、奴が居るのは第2空洞だぞ! 此処まで砲撃が届くとでも・・・』
『いえ、その通りです。敵性機動兵器による砲撃、第3層から第12層までを貫通。第12層構造物破壊痕の直径、約8300m』

絶句するキャロ。
彼女だけではない、無数の意識が信じ難い報告に、紡ぐべき言葉すら見付けられずに凍り付いている。
ティアナより齎された情報は、それ程までに信じ難いものであった。
人工天体各階層構造の厚さは400km前後、階層間に存在する空洞の幅は700km前後。
即ち、あの人型機動兵器が放った砲撃は単純計算で4800kmもの厚さの特殊構造物を撃ち抜き、計12500kmもの距離をほぼ減衰なく貫いて艦隊を襲った事になる。
余りにも常軌を逸した貫徹力だ。

『第12層、上層部と下層部に於いて、砲撃貫通痕の直径が一致しません。目標の砲撃は、指定の距離で炸裂する機能を備えていると推測されます』
『目標、再砲撃体制! また転移して躱すぞ、備えろ!』

並列視界の中、砲撃態勢を維持した儘の人型機動兵器。
ダークブルーに覆われた外装の所々に白いラインを引かれたその巨躯は、これまでに目にした如何なる人型機動兵器とも異なり、余りにも重厚かつ無骨だった。
全身を覆う分厚い装甲、背面と両脚部外縁に備え付けられた4基の巨大なブースターユニット、計8基もの大型ブースターノズル。
放熱機構であろうか、頭部後方からは直上へと垂直に構造物が突き出し、その前面にはフィルターらしき構造物が位置している。
そして何より目を引く箇所は、外観より確認できるだけで計3基にも達する、その巨大な砲身だ。

1基目、左肩部に供えられた大型装甲板上へと位置する、比較的に短い砲身。
現在は機動兵器の直上へと砲口を向けるそれは、装甲板と接する基部が可動式となっているらしい。
外観としては迫撃砲、或いは無反動砲に近いそれは、しかし当然の事ながら単なる実弾兵器ではないだろう。

2基目、背部ブースターユニットの陰へと隠れる様にして固定された、長大な砲身。
宛ら対物狙撃銃の如き外観のそれは砲口を機体左側面、砲身基部を右側面へと向けた状態で腰部背面へと固定されているのだが、優に10mを超える全長の為に砲身が機体の陰から完全に迫り出している。
基部周辺にグリップが設けられている事から、恐らくはマニピュレーターへと保持した上で砲撃を行うものなのだろう。

3基目、今まさに砲撃を実行せんとしているそれ、巨大という表現ですら及ばぬ異形の砲身。
機体右背面から右肩部へと掛けて伸長するそれは全長15mを優に超え、砲身基部に至っては其処だけで機動兵器の胴部ユニットを上回る質量を有しているだろう。
それもその筈、砲身最後部には砲撃時の反動に対処する為か、機動兵器自体から完全に独立した2基の巨大なブースターノズルが備えられており、ブースター起動時の放熱から機体を護る為か追加装甲板までもが設えられているのだ。
砲身全体の質量は、機動兵器の機体と他の砲身、それら全てを合わせたものにすら匹敵し得るだろう。
機体に砲身が備えられていると云うよりは、この砲身の為に機体が備えられていると云った方が適切であろうか。
馬鹿馬鹿しい発想であると一蹴したい処ではあるが、残念ながら地球軍兵器に限っては思い違い等ではあるまい。

151 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2012/11/26(月) 20:01:31.08 ID:HdJJuXh1
そして今、人型機動兵器の右腕部マニピュレーターは右肩部の砲身下部に位置するグリップへと携えられ、その砲口を第3層構造物へと突き付けている。
砲身基部、六角柱状の外殻から3箇所の装甲が開放され、各々が120度の間隔を於いてシールド状に前面へと展開。
砲身最後部の2基を含む計10基ものブースターノズルがアイドリングを開始し、砲身基部3箇所の装甲開放部へと大量の波動粒子が雪崩れ込む様にして集束を始める。
集束し切れなかった波動粒子が干渉しているのか、周囲には青い稲妻状のエネルギーが間断なく迸り、一部は集束体と化して機動兵器の装甲上へと接触、炸裂して大量の火花を散らしていた。
自身が集束する波動粒子によって表層部を損傷しながら、それに対し一切の注意を傾ける事なく、更に波動粒子の集束を加速させる機動兵器。
最早、周囲の空間は極高密度の波動粒子によって完全に安定を失い、機動兵器の光学的認識すら困難なまでに歪み始めていた。
そんな中、一際強烈な閃光が走ると同時、消失する並列視界。

『何だ?』
『極高密度波動粒子の余波により、四十四型が破壊されました』
『集束の余波だけで!?』
『転移15秒前、耐衝撃態勢!』

再び、フォースより拡散した青白い光の粒子が、周囲の全てへと纏わり付く
短距離転移による回避だ。
この程度の時間では大して魔力の増幅はできず、砲撃から逃れる為の距離を移動するだけで精一杯だろう。
だが、他に打てる手など無い。
無様に逃げ回り、反撃の隙を窺う他ないのだ。

『5秒前!』
『遠距離より機動兵器の発光強度上昇を観測、砲撃間近!』
『急げ!』

新たに目標へと接近した四十四型から、再度に人型機動兵器の映像が送信される。
そうして意識中へと映し出された光景は、想像を遥かに超えて異常なものであった。
機動兵器が、青い爆発に曝されている。
外部からの攻撃ではない。
極高密度にまで集束された波動粒子、それにより発生していた稲妻が、青の業火と爆発へと変貌しているのだ。
だが、それでも機動兵器は微動だにしない。
この瞬間にも自身を害し続けている全ての現象を無視し、未だ波動粒子の集束を継続している。
余りにも異常な行動、理解の及ばぬ光景だ。

破滅的な波動粒子の奔流が此方を飲み込むか、或いはそれを掻い潜った此方が目的を達成するか。
連続する異常な状況に麻痺し始めた自身の完成を認識しつつも、状況打開の為の策を練り始めるキャロ。
彼女の意識、そして共有される全ての意識中に、迷いなど微塵も存在しない。

機動兵器を撃破し、R-99を破壊し、バイドと地球軍を殲滅する。
どう足掻こうと、それしか道は無い。
失敗すれば、死ぬだけだ。
今更、何を迷う事が在るのか。
自身等の往く手に立ち塞がると云うのならば、実力で以って排除するまでだ。
私の、私達の生存を脅かすものなど、その存在すら許しはしない。

『そうでしょ、エリオ君』

他の視界より隔てられた上で、これまで一瞬たりとも途切れずに常時展開されていた並列視界。
その中へと、決して途絶える事なく表示され続けていた少年の横顔が、微かに頷く。
キャロは満足と共に薄く笑みを浮かべ、フリード及びヴォルテールへと指示を飛ばした。

152 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2012/11/26(月) 20:02:09.24 ID:HdJJuXh1
大切な人。
もう絶対に、目を離さないと決めた。
少しでも注意を逸らせば、すぐに居なくなってしまう人だから。
ならばずっと、何時でも、何時までも、それこそ自身が死ぬ瞬間まで。
絶対に、目を離さない。
何時までも、見守っていてあげる。
幾ら距離が離れようと、離れる事を選んだとしても、絶対に見失ったりはしない。
だから。



『居なくなっちゃ嫌だよ、エリオ君』



薄く微笑むキャロ。
彼女は気付かない。
微笑んでいる筈の自身の表情が、実際には全くの無表情である事に。
表層意識を共有する中、無表情である筈のそれをエリオが何の疑問に思う事もなく、笑顔として認識している事に。
迷い無く戦う事を選んだ無数の意識の中、故郷を襲った惨劇に泣き叫ぶ声が在る事に。
「微笑んでいるつもり」のキャロは、決して気付かない。

全ての視界を埋め尽くし爆発する、転移魔法と波動粒子の光。
全身を襲う衝撃の中、キャロは無表情の儘に「微笑む」。
表情筋を収縮させ、笑みを浮かべんとする彼女。
その行為に何ら意味が無い事を、彼女は未だ理解してはいなかった。

*  *  *

常軌を逸した暴虐。
良心など欠片も感じられない破壊。
呆ける事さえ許されぬ内に為された殺戮。
臓腑を抉るかの様な激情に支配される中、自身の内に響く醒め切った声が告げる。

下らない事に気を取られている場合か。
戦略を生み出せ、敵を撃滅しろ、故郷を護れ。
お前には使命が在る、義務が在る、護るべき人々が居る。
自身に関係の無い世界、そんな所に対して為された暴挙など忘れてしまえ。

激情と理性の鬩ぎ合いは、長くは続かなかった。
自艦を含め各艦艇のクルーと共有された意識の中、洪水の様に押し寄せる情報。
各々の立場、役割より導き出される、無数の戦略。
其処へ「Λ」による情報と新たな戦略の提供が加わり、一時は思考が氾濫する事態に陥りもした程だ。

だがそれにより、自身の内に渦巻く激情の大部分は、強制的に払拭された。
今は唯、新たな戦略の完成を待つ高揚感に支配されんとする思考を、未だ燻り続ける憤怒の残り火で押し込めている状態だ。
不謹慎である、非人道的であると認識しつつも、その瞬間を待ち遠しく思ってしまうのだ。

「Λ」により発生する艦艇群、その制御権の一部が此方に付与されたと理解した瞬間、この戦略は発動した。
各艦艇指揮官ではなく、技術者を中心に発案されたそれは、艦長である自身としては俄かには受け入れ難いもの。
というよりも、理解し難いものであった。
技術者達の主張は、こうだ。

「Λ」により発生した艦艇「兆級巡航艦」及び「京級戦艦」が有する打撃力は、確かに驚異的ではある。
だがそれでも、地球軍およびバイドの艦艇、そして友軍である「グリーン・インフェルノ」のそれには及ばない。
ならば単艦ではなく、複数艦艇の機関を結合させる事で出力を増大させ、その上で攻撃を行えばどうか。
各艦艇の構造については、既に「Λ」より詳細な情報提供が為されている為、問題は無い。
後は情報通信艦艇を中枢として共有意識中にて改修計画を構築し、それに基き新型艦艇を発生させる。

153 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2012/11/26(月) 20:02:47.36 ID:HdJJuXh1
要は、戦域に於いて新造艦を建造してしまおうというのだ。
戦略とも呼べぬ余りに現実離れした計画に、当初は反対の意見が相次いだ。
だが、無尽蔵に出現する汚染艦隊を相手取る中で、現状に於ける最大戦力であるグリーン・インフェルノの対処能力に限界が見え始めた今、新たな戦力の確保は必須要項であった。
そして、ごく短時間での議論の結果、計画は実行に移される事となったのだ。

現金なものだとは思う。
あれだけ反対し、実現不可能だと決め付けていたというのに、その計画の結果が眼前へと具現化した今、自身は湧き起こる興奮を抑え切れずにいる。
3隻の新造艦、内1隻の指揮を任されたというだけで、意識中の何処かで子供の様に喜ぶ自身が居る。
だが、本当にそれだけだろうか。

違う、そんな訳は無い。
この興奮は、そんな純粋な理由から湧き起こるものではない。
もっと昏く、陰惨な理由から起こる興奮。
そう、復讐の興奮だ。

彼等は、地球軍は、あの世界の人々を虐殺した。
今回の事件が起こる直前まで、自身と家族もまた、其処に住んでいたのだ。
善良なる人々、美しい風景。
優しい潮風に包まれ、穏やかな時間が流れていた、あの町。
最早、永遠に失われてしまった、記憶の中だけに存在する光景。

その世界の全ての地域がそうであった訳ではないが、しかし決して忘れる事などできない大切な世界。
今や炎と水に覆われた大地、大量の粉塵に覆われた空しか持たぬ、死の惑星。
第97管理外世界、地球。

第17異層次元航行艦隊、彼等が何故この様な暴挙を働いたのかは、全くの不明だ。
だが如何なる理由によるものであろうとも、自身の故郷たる世界を自らの手で以って破壊するなど、正気の沙汰ではない。
何より、約60億もの人々を僅か5分足らずの間に虐殺するという、バイドにも劣らぬ程の暴虐極まる行為を為しながら、彼等の行動からは僅かなりとも躊躇というものが見て取れなかった。
彼等の思考が非人間的である事は疾うに理解していた筈であるが、それでも激しい憤りを覚えずにはいられない。

しかし「Λ」より齎された情報の存在が、第17艦隊への積極的な攻撃を許しはしない。
今、彼等に消えて貰っては困るのだ。
そうなれば、次元世界は地球軍増援艦隊かバイド、いずれかの手によって滅ぼされる事となってしまう。
よって、第17艦隊への攻撃を可能とするには、増援艦隊とバイド双方の殲滅を先に実現させねばならない。
つまり、今この胸中を埋め尽くす攻撃衝動と報復を望む意識は、本来それを向けられるべき第17艦隊ではなく、現状では増援艦隊とバイドへと向けられているのだ。
八つ当たり以外の何物でもないが、しかし積極的に止める気も無い。
どの道、全て殲滅する他ないのだ。

そして、何よりも受け入れ難い真実。
他ならぬ「Λ」もまた、第17艦隊に先んじて地球への無差別攻撃を行っているのだ。
地球軍からの干渉により失敗したとはいえ、成功していればその時点で地球は消滅していた事だろう。
そんな無慈悲かつ非人道的な存在の支援を受けねば戦う事も出来ぬ、その現実が何よりも気に食わないのだ。

『艦長、新造艦の調整が完了しました』

クルーからの報告。
その言葉を意識中にて反芻しつつ、彼は並列思考を増設する。
既に80を超えるそれら思考の内、半数以上が新造艦の制御に充てられているが、完璧な制御を為すには更なる増設が必要となる様だ。
だが、彼はそれを負担とは認識しない。
寧ろ、自身が艦艇全体の制御中枢として完成してゆく充足感を、逸る復讐心と諸共に抑え込む事に腐心していた。
焦る事はない、その時は近いのだと、意識中にて只管に自身へと言い聞かせる。

そして遂に、その瞬間が訪れた。
新造艦のシステム全体が正常に稼働を開始し、それらより齎される情報が彼の意識の隅々まで奔り抜ける。
衝撃にも似た感覚と共にそれを感じ取り、彼は徐に念話を発した。

『此方クラウディア、ハラオウン。経過良好、全システム異常なし』

154 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2012/11/26(月) 20:03:49.28 ID:HdJJuXh1
その念話を発すると共に、意識の大部分を新造艦へと移行するクロノ。
合計570にも到る彼の並列視点は、自身が操る艦艇の外観を余す処なく映し出した。
そうして得られた光学的情報は1つの像を結び、巨大な艦影を意識中へと正確に投影する。

それは、奇妙な外観の艦艇だった。
兆級巡航艦の艦首より延びる、巨大な環状構造物の連続体。
5基の環状構造物が連続して直線上に配置され、其々を接続する固定部によって巨大な円筒構造物を形成している。
円筒部の全長は、兆級巡航艦のそれとほぼ同等だ。
更にその先端部は、京級戦艦の後部へと接続されている。
左右両舷エンジンユニットの間へと接続されたそれは、京級戦艦後部と兆級巡航艦前部とを繋ぐ連結ユニットであった。
ユニット内部には青い光の筋が奔り、それらは絶えず兆級巡航艦から京級戦艦へと流れ続けている。

戦艦と巡航艦を繋いだ、奇妙な巨大艦艇。
だがそれは、恐るべき破壊を為す事を目的として生み出された、混成艦隊の切り札。
そして今、その艦艇は他ならぬクロノの指揮下に於いて、実戦へと投入される事となるのだ。
暴力的なまでに高まる艦内の魔力密度、獲物を求め執拗な策敵を開始する各種センサー群。
餓えた肉食獣の如く唸りを上げる魔力炉心、その咆哮を意識中へと留めつつ、クロノは宣言する。



『現時刻を以って「EX-BS01-F 兆京級合体戦艦」実戦運用を開始する』



空間全域に存在する全ての艦艇、あらゆる機関が一斉に唸りを上げる。
それは反撃と迎撃の狼煙、獲物を求める機械の獣達の咆哮。
そして、新たなる地獄の始まりを告げる、亡者達の雄叫びであった。

155 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2012/11/26(月) 20:08:11.59 ID:HdJJuXh1
投下終了です
さるさんに引っかかってしまい、結果として長らくスレを占拠してしまった事、誠に申し訳ありません
次回の投下までに、何らかの対応を考えておきます
なお、保管庫への投下については暫くお待ち下さい
それでは、また次回

156 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/11/27(火) 04:40:37.54 ID:f+AhvhjN

さるさん食らったら避難所でもいいと思う

157 :ブレブレ×なのは ◆ZiruguE6bo :2012/11/27(火) 04:47:36.00 ID:jFEn5J3i
>>155
相変わらず緊迫した状況が続いていて目が離せません
そしてさるさんとは災難です

で、シリアスな流れが続いている状況でなんでこんなの書いてたんだろうと思わなくもないのですが
39話投稿いたします

158 :ブレブレ×なのは ◆ZiruguE6bo :2012/11/27(火) 04:49:12.37 ID:jFEn5J3i
ブレイクブレイド StrikeS
第38話「弱点発覚」

機動六課棟の早朝
高町なのははいつもより早く起きるとジルグの部屋に向かって歩いていた。
もちろんいかがわしい理由があるわけではなく
表向きの目的としては先日の模擬戦の謝罪をきちんとジルグにすることであった。

模擬戦から数日経ってはいたのだが
ジルグはどうやらなのはから逃げることを面白半分の日課と決めたらしく
朝食時だろうと訓練時だろうと、決してなのはとの一体一の状況を作らせないのであった。

そこでなのはがとった行動は、
夜討ちはさすがに憚った、というより訓練プログラム作成の関係で無理なのでいわゆる朝駆けであった。
19歳の年頃の娘が同年代の男性相手に何をしているのか
高町家の家族が知ったら皆一様に頭を抱えたであろう。

「ふっふっふ…さすがに寝起きなら逃げられないよね」
こちらも完全にジルグを追いかけるのが面白半分本気半分の日課状態になっているなのはが
不敵な笑みを浮かべてそろりそろりとジルグの部屋に近づく。
「ロックは掛けてあるようだけど甘いよジルグさん。私は隊長なんだからこんな権限もあるんだよ?」
そういいながらジルグの部屋のドアのロックを解除するなのは。
もちろんそんな権限などあるはずもない、単なる職権乱用である。
プライバシーの侵害も甚だしい。

あっさりと抵抗を放棄し開くジルグの部屋の扉。
そこから注意深く中を覗き込むなのは。
まだ就寝時間でもあり、さすがに最新の建物に設置された高性能のドアである。
静音性は十分でありジルグに気づかれた様子はなく、未だ彼は寝ている。
気配に気づかれた様子もない。

「ふふふ…戦いは時間を選ばないんだよ? 今回こそ私の勝ちだね」
一人勝ち誇り忍び足でジルグに近づくなのはだったが…

159 :ブレブレ×なのは ◆ZiruguE6bo :2012/11/27(火) 04:50:36.11 ID:jFEn5J3i
むくり

「ひゃ!?」
突然ジルグが上半身を起こした。
まさか自分を誘い込むための演技だったのか!?
動揺するなのはだったが…

「…あれ? もしかしてジルグさん寝ぼけてる?」
上半身裸の状態で起き上がったジルグだが、目は半開きで焦点も合っていない。
そもそもなのはの方を向いていない。
「こ…これはもしかして貴重なジルグさんの弱点発見?」
少なくともジルグが今まで何かの時間に遅れてきたということはない。
朝食の時間もちゃんと顔を出しており、朝食前にヴァイスやエリオと顔を合わせることだって知っている。

というかそもそもわざわざ他人の寝起きを襲撃する人間などまずいないので当たり前と言えば当たり前なのだが
この世界に来てからずっとジルグは一人部屋を与えられており
寝起き姿を他人に晒すことなどなかった。
朝起きられないというよりこれは
「…もしかして寝起きがすごく悪いのかな?」
ある意味唯一といっていいジルグの弱点は寝起きの悪さであった。
起きて5分ほどの間は放心状態が続き、体が使い物にならない。
作戦時の仮眠等ならともかく、熟睡しているとその弱点がもろに露呈される。
ティアナとスバルの朝練にたまにしか顔を出さないのも
実を言うと半分位これが原因である。

「こ…これは日頃の負けを晴らすチャンス…ってそうじゃなくて!
あ、でもこういう機会ってまずないよね。ふっふっふ…」
完全にいたずらっ子の表情になったなのはが手をわきわきさせながらジルグに近づく。
対してジルグは完全に放心の無防備状態である。

「王道としてはほっぺたをつつくとか額に『肉』って書くとかだろうけど
それはつまらないよね。第一ペン持ってないし…何か面白い…って、きゃあ!」
普段なら全く考えられない状態に夢中になりベッドにつまづくなのは。
そのまま思わずジルグの体にしがみついてしまった。

160 :ブレブレ×なのは ◆ZiruguE6bo :2012/11/27(火) 04:58:10.39 ID:jFEn5J3i
───同時刻
「あかん…また徹夜してしもた…」
八神はやては眠たい目をこすりながら自室へ向かっていた。
もちろん遊んで徹夜したわけではない、山のような書類と格闘しての結果である。
月末が近い事もあり、普段以上に襲い来る書類の波との激闘がつい先程終了したのであった。
少し前にグリフィスとは自室に戻し、リィンフォースはそのまま執務室のソファで眠っている。
可能な限り手伝ってはもらっていたが、最終的な判を押すのははやての仕事である。
朝食を抜くことになるがさすがに眠気には抗えない。
一時間でいいので仮眠を取ろうと自室に戻ろうとしているところであった。

「きゃあ!」

「ん?」
今のは聞き間違えるはずもなくなのはの声である。
しかし彼女の部屋はこっちではないはずだ。
進むとジルグの部屋のドアが空いている。
「なのはちゃん? こんな朝早くにジルグさんの部屋に不法侵入してなにして…」

目の前の光景に固まるはやて。
「え!? は、はやてちゃん…!?」
はやての目に飛び込んだのは上半身裸のままベッドから体を起こしているジルグと
傍から見るとどう考えても同じベッドでそのジルグに抱きついているようにしか見えないなのはの姿があった。

時間帯的には朝とは言え人気のほとんどない早朝である。
そして上半身裸の男性と女性が部屋のそれもベッドの上で二人きりで抱き合って(正確には抱きつかれて)いる。
一般的には立場が逆な気もするが、どうみても夜這いです。本当にありがとうございました。

161 :ブレブレ×なのは ◆ZiruguE6bo :2012/11/27(火) 05:03:27.76 ID:jFEn5J3i
それぞれ違う意味で顔を引き攣らせるなのはとはやて。
「な、なのはちゃん…普段あんな様子なのにいつの間にジルグさんとそんな関係に…」
「ち、ちちちちちち違うよはやてちゃん! そ、そうじゃなくて! ね! そ、そうだよねジルグさん!!」
どう見てもいいがかりをつけられている立場のジルグなのだが
本人は未だに放心状態でかすかになのはの方を向いている。
はやてからみると行為を見られたなのはが一方的に取り乱しているだけであって、ジルグは全く否定しているように見えない。

「す、すすすすまんなのはちゃん!! で、でもあれやで!? そういうことならちゃんとドア閉めてからせんとあかんよ!?
うちらくらいの歳ならともかく! ほ、ほら! フォワードの子らが見たりしよったら教育上よくあらへんし!
そ、それじゃあお邪魔虫は消えるさかい! が、がんばってな!?」
ダッシュで部屋の前から自分の部屋に駆け戻るはやて。
「ちょ、ちょっと待ってよはやてちゃん! ち、違うんだってばー!!!」
こんなことをフェイトやそれどころかユーノあたりにでも喋られたりした日にはいろいろと終了してしまう。

そう直感したなのはが鬼の形相で全速力ではやてを追いかけていく。
後に残されたジルグが放心から回復したのはそれから数分後のことであった。

──はやての脳内
「もう…ジルグさんたらいつも私に意地悪ばっかりするんだから」
「好きな奴ほどいじめたくなるって言うだろう? それにしてもいつまで入口にいる気だ?」
「う、うん。でも、は…はずかしいよやっぱり」
「わざわざ部屋に忍び込んできた奴が言うセリフとは思えないな?」
グイッ
「あ…ジルグさん? きゃあ!」
──以上妄想終了

「こ、これはマズイで…うん、マズイ。こんな事周りに知られでもしたらとんでもなくゆか…やなくてスキャンダルやしな。
とりあえずヴォルケンリッターとフェイトちゃん集めてばら…コホン、もとい相談しよか」
ニヤつく顔を必死に抑えながらブツブツ呟きつつ部屋に向かって走るはやてだったが
その背後から誰かの気配を感じて「あ」という間抜けな声を上げる。
そこには下手をすると今までで最速のタイムで走ったかもしれないなのはが
目の笑っていない笑顔で無言のレイジングハートを振りかざした姿があった。

162 :ブレブレ×なのは ◆ZiruguE6bo :2012/11/27(火) 05:05:02.13 ID:jFEn5J3i
数分後の洗面所
「よう」
「あ。ジルグさん。おはようございます」
「ん…ああ、おはよう」
いつもと比べて生返事を返すジルグ。
「ん? どうかしたのか?」
怪訝そうなヴァイスをちらりと見るが、普段の表情に戻り「いや、なんでもない」と返すジルグ。
「? ならいいけどな」
ヴァイスはこういうところでいちいち根掘り葉掘り聞いてくる男ではない。
「…なんだったんだ?」
「え?」
「いや…」
自分の寝起きの悪さは知っているが、我に返った時にジルグが見た光景はどうも誰かに体を掴まれたような感覚と何故か空いている自室のドア。
そして遠くで誰かが走り回っている音だった。
なんだかよくわからないが自分がよく逃げ回っている教官殿の顔が記憶にあったような気がしなくもない。
まぁ覚えてもいないことをいちいち考えても仕方ないだろう。
そう結論付け、ジルグはヴァイスたちと食堂に向かうのであった。

「(げ…)」
食事を始めたヴァイスが食堂に入ってきたなのはの姿をみつけ、内心悲鳴を上げる。
いつもなら食事をとってきたなのはが席に近づき
相変わらずそれをジルグがのらりくらりとかわしてヴァイスにとっては胃の痛い空気が形成されるのだが…


「……ッ!!」
ジルグを見たなのはが顔を真っ赤にして飛び上がり一番離れた席へ逃げてゆく。
「あれ?」
「どうかしたのか?」
背後で起こっていた光景であるが故に気づいていなかったらしいジルグが
食事の手を止めたヴァイスを見て尋ねる。
「あ、いやなんでもない」
「? そうか」
「なぁジルグ。つかぬことを聞くけどさ」
「なんだ?」
「お前なのはさんになにかしたのか?」
「いや、特に心当たりはないがどうかしたのか?」
本気で顔に?マークを浮かべて逆にヴァイスに問うジルグ。
「あ、いや。心当たりがないんなら別にいいんだけどな、うん」
「???」
珍しく考えこむジルグを見てさらに疑問を募らせるヴァイスだが
この場合ジルグは本当に覚えてないのだから彼からも答えようがない。
なんにせよ精神的にストレスの貯まる時間が減ったのはいいことだ。
下手に藪をつついて蛇を出さないほうがいいだろう。
そう考えたヴァイスは久しぶりの快適な朝食を満喫するのであった。

「あれ? 珍しいね。 なのはさんがジルグさんに絡まないなんて」
「酔っぱらいじゃないんだから…まぁ平和でいいんじゃないの?」
「…そうですね、本当にその通りです」
「(生暖かい笑顔)」
フォワードの4人もある意味珍しい光景を見て多少驚くが
程度の差こそあれヴァイスと同じようにいつもの微妙な空気が流れなくて済むのは結構なことであったので
特にそれ以上の感想は持たなかった。

執務の時間を1時間過ぎても課長室に現れないはやてを呼びに行ったグリフィスとリィンフォースが
「あれ? なんでうち部屋で寝とったんや? なんか記憶が飛んどる気がするんやけど…頭も痛いしなぁ」
とこぼすはやてを心配してもう半日ほど強制的に休ませたのはまた別の話である。

163 :ブレブレ×なのは ◆ZiruguE6bo :2012/11/27(火) 05:09:49.86 ID:jFEn5J3i
以上です。
そろそろ戦闘しないとなぁ、と起き上がりに投下しつつ遠い目になりました。
そしてしょっぱなに38話とか書いてしまっていました。
やはり寝起きはダメですね。

とりあえずや約20時間後には本編の最新話が更新されてやったぞジルグー!
になる予定なので楽しみです。

では

164 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/11/29(木) 11:51:21.38 ID:cAA5Fn0D
R-TYPEΛ乙(遅ればせながら;^^)
最新話読みましたよ、コレで安心して年末迎えられる。

165 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/11/29(木) 12:19:13.55 ID:nr/GB+BV
>>163
おつっす!
ジルグww

>>155
はい地球終了ーーーッ!!
……桃子さんたちやエイミィさんたちもレーザー照射え苦しむ暇はなかったろう。
おとなりはプラズマ熱で消毒

地球を攻撃した17艦隊には一部同意できる。
バイドで苦しむ前に楽にしてやろうとしただけなんだよな?
とりあえずナンバーズを丁寧に殺害したり
地球人類皆殺しということをやってくれた作者氏に乙w

あんただけだよ!
丁寧にたんたんと地球を滅ぼしたSS作者はw

166 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/11/29(木) 12:28:01.13 ID:6kUBnh/R
>>165
うざい

167 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/11/29(木) 14:35:35.22 ID:ws2iG89U
>>155
うおおおおお!待っていました!乙乙!
これからどうなるか予測できねえ。太陽のアレは来るのだだろうか?
>>163
乙!
ついに11巻が発売されたぜ!ジルグはいまだにライガットの心の傷になってるぜ。
12巻は早めに頼む。

168 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/11/30(金) 19:28:10.58 ID:rdDkJTIR
乙!
待ってたかいあった!

169 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/01(土) 10:10:11.49 ID:bRB8hK6K
>>98
投下乙です、キャロちゃん(キョロちゃんと響が似てますが気にしないように)怪我してしまいましたか…
現世への復帰は絶望的でしょうか、これは。
なにはともあれ、今後の展開に期待大ですね。

170 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/01(土) 21:52:17.22 ID:k62xtGcy
>>155
GJ!
ラストダンサーマダー

171 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/01(土) 23:02:28.47 ID:HzoQ2Kz/
>>155
地球軍のあまりにもな暴虐にグランゼーラ革命軍が顔を真っ赤にしてます!!

172 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/02(日) 13:43:55.25 ID:vgOL3Yuo
境界線上のホライゾンとのクロスってどうだろうかとふと思った
大罪武装をロストロギアと判断し
回収&隔離を行おうとする七課vs武蔵教導院ってノリで

173 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/02(日) 13:45:06.06 ID:PCSGQC9o
だからなんで滅んでもいない現行文明の生み出したものを古代遺失物扱いするのかと何度(ry

174 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/02(日) 16:27:03.71 ID:Huq376Jr
あれ?よく考えたらバイド作った文明は滅んでないからロストロギアにあてはまらな(PAN!! PAN!!

175 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/02(日) 20:06:55.78 ID:7Tx2w1U/
バイドは合法ですね。

176 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/02(日) 23:24:17.02 ID:3hvMscSJ
>>155
遅ればせながら乙
背景設定でも物語のオチでもなく、過程で地球滅んだSSは初めて見ましたよ

177 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/02(日) 23:38:11.56 ID:8pYlwICb
この一年ほどの間で地球軍の中の人がアイレムじゃなくてタイトーに入れ替わったんやな
それなら地球壊滅も仕方ないね

178 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/03(月) 00:01:57.38 ID:ztXYUf4Y
>>172
魔砲少女vs射殺巫女とか思いついたけど
でも武蔵側はベルさん使って懐柔策を取るだろーな

179 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/03(月) 00:26:15.56 ID:AvkL5LcK
こうなったらGダライアスばりに全生命消滅再生オチで。

180 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/03(月) 01:49:21.98 ID:Fe2nu97k
>>179
いやA.N.の余波はジ・エンブリオンが吸収しちゃったしぶっ飛んだのサムラックとルティアだけじゃねあれ

181 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/15(土) 08:47:39.33 ID:Mv3Dc2pD
機動六課vs殺せんせー(暗殺教室)とかどうだろう
世界存亡の危機にエースオブエースから夜天の騎士に
なりふり構わず人造魔導師に暴走召喚師に戦闘機人にレリックウェポンまで惜しげもなく派遣されて
史上空前の掃き溜め・・・もといドリームチームを結成して殺せんせーを殺害せよ(泣けるで、主にはやてが)

ああでも対立する敵がいないと結果的に管理局アンチになっちゃうのかな?

182 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/17(月) 12:27:00.77 ID:alsjpCU0
こうなりゃ3年Z組銀八先生と組ませよう。坂田銀八がヴィヴィオの担任なるって話で

183 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/17(月) 13:35:46.91 ID:grDhGvAq
>>181
マッハ20じゃ微妙
それとも先生魔改造すんの?

184 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/17(月) 18:03:45.58 ID:Bj025OV0
というか、殺せんせーをこういう他作品蹂躙目線で見てる奴がいると分かると
原作の殺せんせー自体素直に楽しめなくなりそうだわ

185 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/18(火) 06:14:00.61 ID:Pi10oNkT
あるねー、そういうのw
かつてユリショッカーなんてののせいでディケイドっつーか
ライダー作品全般がゴミに思えた時期が俺にもありました
いや今じゃあの作品に関しては、逆に清々しさすら感じるようになったけどねw
蹂躙展開はもちろん、世界観&キャラ設定改変おまけに多重クロスとメタネタ満載……

まぁなんつーかなんでもアリってのがこのスレの売りなんだろーし
あんまし職人が委縮しちゃうような発言はしないほうがいいと思うよ?

186 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/18(火) 16:27:19.96 ID:UFCj9TcJ
R-TYPEはもう手遅れだけどな

187 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/19(水) 14:15:54.30 ID:SPFzAucF
ホライゾンネタで逆に六課側が、歴史再現に介入するというのは如何か

問題は、なんの歴史再現をして、誰が誰を襲名するかだが……

188 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/19(水) 22:18:33.36 ID:Kz3qi7Ag
Gulftown氏撤退かな
まとめwikiから作品が消されているけど

189 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/19(水) 22:51:18.77 ID:CUF1oGz0
>>183
マッハ20で微妙ってどういうこと?
真・ソニックフォームでも「時に人間の反射速度を凌駕」する程度でしょ?

190 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/19(水) 23:15:37.58 ID:CUr/sD9e
列挙されてるメンバーが一斉に襲いかかったら、マッハ20じゃ足りない気がする

191 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/19(水) 23:31:26.40 ID:BbzfJ4t9
>>189
君にとっては何か真理を感じてる文のようだけど
そんな抽象的な解説に同意を求められてもみんな困るよ

192 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/20(木) 05:24:59.15 ID:2rSpqiOh
寧ろ最大加速時でようやく極超音速領域に入れる程度のレベルが鳴り物入りの新兵器
それに対して常時Mh20はかなり上じゃないのか

193 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/20(木) 06:22:13.06 ID:Dt/wRBS5
マッハ20に対してかなり低評価なのか感覚麻痺してるのか
時にと常時じゃ全然違うな

194 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/20(木) 08:09:15.53 ID:jGQzcVfO
で、その新兵器って作中でどんな凄い活躍したの?

195 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/20(木) 09:27:36.12 ID:VL0+TXSW
どこまで行ってもハンマーで速度を語るような物ではなかったな
てか、なのはで正確な速度なんて一度も出てないしこれからも出ないだろうから
感覚の麻痺もへったくれもないよ

無い物と比べてお互いドヤっても仕方ないよ、君たち

196 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/20(木) 21:04:44.19 ID:qfx6cAKp
>>188
oh…

197 :◆ce0lKL9ioo :2012/12/20(木) 22:26:17.06 ID:hrrYWm04
 お久しぶりです。
 本日23時半より、なのはStrikerSと聖闘士星矢(設定はアニメ寄り、Ωはスルー)とのクロス『リリカル星矢StrikerS』第一話を投下します。

198 :◆ce0lKL9ioo :2012/12/20(木) 23:35:34.52 ID:hrrYWm04
それでは時間になりましので、投下開始します。

   第一話 襲撃、黄金の闘士たち(前編)

 その日、ミッドチルダの時空管理局地上本部では、公開意見陳述会が行われていた。
会議開始からすでに四時間が経過し、雲の多い空は夕暮れの紅から、夜空の藍色へと変わりつつある。
 地上本部の外周部を、茶色い制服を着た二人の少女が歩いていた。
 機動六課スターズ分隊所属、青い髪をしたボーイッシュな少女スバル・ナカジマと、オレンジ色の髪をツインテールにした勝気な瞳の少女ティアナだ。
 機動六課は、他の部隊と共に会場の警備任務に就いていた。スバルとティアナは、緊張した面持ちで見回りを続ける。
 聖王教会の騎士カリムの預言では、公開意見陳述会が襲撃されると出ている。
 おそらく犯人は、稀代の科学者にして、広域指名手配されている次元犯罪者ジェイル・スカリエッティだ。ガジェットドローンと呼ばれる無人兵器群と、機械と人間の融合によって高い能力を得た戦闘機人を配下に従えている。
 これまで機動六課とはロストロギア、レリックを巡って幾度も戦ってきた。
 実はスバルの正体も戦闘機人だ。製作者はスカリエッティではないが、この巡り合わせに何か因縁めいたものを感じていた。
「おい、お前たち。そっちはどうだ?」
 赤い髪を二つの三つ編みにした、鋭い目つきの小さな少女がやってくる。スターズ分隊副隊長のヴィータだ。ヴィータの肩には、手の平サイズの少女、ユニゾンデバイスのリインフォースUが腰かけ、後ろには、ライトニング分隊の二人が控えていた。
明るい雰囲気の少年がエリオ、大人しい雰囲気の少女が竜召喚師のキャロだ。
「異常ありません」
「今のところ、どこも異常ないみたいです」
 青い髪を腰まで伸ばした女性も、スバルたちと合流する。陸士108部隊から機動六課に出向しているスバルの姉、ギンガだ。
「このまま何事も起こらなければいいんですが」
『未知の高エネルギー反応確認! 敵戦力は推定AAAランクが三人です』
 機動六課ロングアーチスタッフ、シャーリーから、敵出現の連絡があったのは、その直後だった。
「未知のエネルギー? 戦闘機人か?」
 ヴィーが訊いた。戦闘機人は魔力とは異なるエネルギーを使用する。
『違います。魔力反応に似ていますが、これまで観測されたことがないものです。ガジェットの反応もありません』
「スカリエッティじゃないのか?」
 スカリエッティが関わっているなら、大量のガジェットが現れるはずだ。ガジェットに搭載されたAMFによって、相手の魔法を妨害するのが奴らの基本戦術だ。
 ヴィータは周辺の地図を投影する。三人の襲撃者はまったく別方向から一直線に地上本部を目指していた。
 ヴィータは敵の正体を詮索するのを後回しにする。どうせ誰であろうと、敵ならば倒さなければならないのだ。
「三人か。エリオとキャロは、はやてたちにデバイスを届けろ」
「わかりました!」
 地上本部内はデバイスの持ち込みが禁止されている為、中にいるはやて、なのは、フェイト、シグナムのデバイスは、ヴィータたちが預かっていた。
 デバイスを受け取ったエリオとキャロが、急いで建物の中に戻っていく。
「北は私とリインが担当する。お前たちは東南の敵に当たれ」
 残りの敵は他の部隊に任せることにする。
「了解!」
 全員バリアジャケットを装着し、戦闘準備を整える。
「行くぞ、リイン!」
「はいです。ユニゾン・イン!」
 リインがユニゾンし、ヴィータの真紅のバリアジャケットが白へと変わる。
 ヴィータとスバルたちは。それぞれの戦場へと向かって行った。

 スバル、ティアナ、ギンガの三名は目的地へと急ぐ。敵はすでに警備部隊と交戦を開始している。
「何よ、これ!?」
 警備部隊の情報に目を通していたティアナが、突然大声を出した。
 地上本部の警備には質、量ともにかなりの人員が割かれている。しかし、その反応が急激に減っていく。

199 :◆ce0lKL9ioo :2012/12/20(木) 23:37:03.67 ID:hrrYWm04
 スバルたちが現場に到着した時には、すでに戦闘は終わっていた。
 武装した局員たちが折り重なるように倒れ、かすかな呻き声を上げている。
 その中心でただ一人立っているのは、異様な風体の人物だった。
 魚を模した、太陽の如き輝きを放つ黄金の鎧。目深にかぶった兜のせいで、その表情はうかがえない。右手には、凄惨な現場には不釣り合いな黒いバラの花を持っている。
「何、あいつ?」
 ティアナが戸惑いの声を上げる。
 敵が着ているのは、下手をすれば自らの動きを阻害しかねない全身鎧だ。バリアジャケットにしては、あまりにもごつい。では、敵の正体は一体何なのか。
「ピラニアンローズ」
 こちらを察知した黄金の闘士が、黒バラを投擲する。
 スバルは咄嗟にバリアを展開した。まるで投げナイフのような黒バラが、バリアを食い破りスバルの袖を掠める。それだけでバリアジャケットの袖が抉れ、下の皮膚に一条の赤い線が走る。
 破壊力が尋常ではない。この黒バラの前では、バリアジャケットなど紙同然だ。
「スバル、行くよ!」
 ティアナが二丁拳銃型デバイス、クロスミラージュから魔力弾を撃つ。スバルとギンガのローラーブーツが大地を疾走し、挟み込むように接近する。
「もらった!」
 スバルとギンガが渾身のストレートを繰り出す。しかし、その瞬間、敵の姿が視界からかき消えた。
「えっ?」
 スバルとギンガが呆気に取られる。
「スバル、後ろ!」
 ティアナからの警告。振り向く間もなく、スバルは背中を強く蹴られ、無様に地面に倒れ伏す。
「この!」
 ティアナとギンガが躍起になって黄金の闘士を攻め立てるが、繰り出す攻撃がことごとく空を切る。
(速い! まさかフェイト隊長以上!?)
 一方的に攻められながら、敵からは明らかな余裕が感じられた。最初の一撃以来攻撃してこないのも、できないのではなく、己がどれだけ速く動けるか試しているようだった。
「私を忘れるな!」
 起き上がったスバルが、右側から足払いをかける。敵の動きが一瞬乱れるが、それだけだった。スバルの頭上を飛び越えて、はるか後方に着地する。
(今の見た?)
 ティアナが念話で仲間たちに話しかける。
(うん。あいつ、右側の攻撃に反応が一瞬遅れた。もしかしたら怪我してるのかも)
(なら、そこを狙うしかない)
 スバルたちは呼吸を合わせ、突撃するタイミングを計る。
「ふむ。やはり視界が悪いな」
 その矢先、敵が兜を脱いだ。長い銀色の髪がこぼれ落ち、右目を覆う黒い眼帯が露わになる。黄金の闘士の正体は、小柄な少女だった。
「お前は!?」
「私はナンバーズ、チンク。タイプゼロ、お前たちと同じ戦闘機人だ」
 スバルの疑問に、少女が答えた。タイプゼロは、スバルとギンガの異称だ。
「あっれー? まだ終わってなかったっスか?」
 朗らかな声と共に、新たな少女が乱入してくる。
 翼を生やした黄金の鎧に、右手に弓を携えている。チンクの物とは違い、兜はヘッドギア型で、楽しげに笑っているのが良く見える。
「ウェンディ」
 チンクが弓を持った少女の名を呼ぶ。
「こっちはまあまあ強かったっスよ」
 ウェンディの笑みに残酷なものが混じる。翼の後ろに隠していたものを、スバルたちのそばに投げ捨てる。
「ヴィータ副隊長! リイン曹長!」
 スバルが悲鳴を上げる。
 ウェンディが投げたのは、ぼろぼろになったヴィータとリインだった。ティアナが容体を調べるが、命に別状はないようだった。
「そんなヴィータ副隊長が負けるなんて」
 ギンガも動揺を隠せない。
「へえ。チンク姉が手こずってるとなると、少しは骨がありそうだな」
 続いて、黄金の鎧を着た赤い髪の少女が、スバルたちの後方からやってくる。色こそ違うが、顔立ちはスバルに瓜二つだった。
「ノーヴェ、そっちももう終わったのか?」

200 :◆ce0lKL9ioo :2012/12/20(木) 23:38:31.84 ID:hrrYWm04
「ああ。手応えのない連中ばっかりで、準備運動にもならなかった」
 ノーヴェと呼ばれた赤い髪の少女が、たてがみを模した兜の下で、唇を不機嫌そうに尖らせる。
 ティアナの背を冷たい汗が滑り落ちる。チンク一人でも倒せなかったのに、おそらく同等の実力を持った戦闘機人が二人も増えた。
 ユニゾンしたヴィータでさえ敵わなかった相手だ。普通なら撤退を考えるところだが、囲まれていてはそれも難しい。
「チンク姉とウェンディは休んでてくれ。こいつらは私がやる」
「まだ実戦テストは充分じゃないんだ。あまり無茶はするな」
「わかってるよ。チンク姉は心配性だな」
 ノーヴェが気のない返事をする。
 ノーヴェの注意が、こちらからそれたと見るなり、スバルが走り出した。リボルバーナックルのカートリッジをロードし、魔力を右拳に集中させる。
 ノーヴェは煩わしそうに振り向くと、同じように右拳を繰り出す。
「一撃必倒、ディバインバスター!」
「ライトニングボルト!」
 空色の拳と黄金の拳が正面から激突する。ノーヴェの拳がわずかに押し戻される。
(いける!)
 スバルが再びカートリッジをロードする。速度はノーヴェの方が上かもしれないが、威力はこちらがわずかに勝っている。畳みかければ、勝機はある。
 スバルを援護しようと、ギンガが飛び出し、ティアナがクロスミラージュを構えた。
 ノーヴェは無造作に右腕を前に突き出した。
『エネルギー反応さらに増大! 推定オーバーS!』
「ライトニングプラズマ!」
 シャーリーの警告と、ノーヴェが技を放ったのは、まったく同時だった。
 スバルたち三人の視界を、閃光が縦横に瞬いたと思った次の瞬間、体が宙に舞っていた。
「……えっ?」
 わずかに遅れて、激痛が全身を駆け巡る。想像を絶する速度で、滅多打ちにされたのだ。スバルが、ティアナが、ギンガが受身も取れず地面に激突する。
「よし。これで終わりだな」
「そうでもないみたいっスよ」
 勝利を確信したノーヴェを、ウェンディがからかう。
「まだ……負けてない」
 痛みを訴える腕と足を無理やり動かし、スバルとギンガが立ち上がる。だが、強がりなのは明白だった。膝は震え、両腕を上げる力すら残されていない。
 必殺技を使って仕留めきれなかったことは、ノーヴェの癇に障った。舌打ちと共に、再びライトニングプラズマを放つ。
 ギンガが最後の力を振り絞り、スバルをかばう。
「ギン姉―――――――――――っ!!」
 スバルが絶叫した。目の前で、ギンガが黄金の閃光によって徹底的に打ちのめされていく。それだけでは飽き足らず、閃光はギンガごとスバルを吹き飛ばす。
 今度こそスバルたちが動かなくなったのを確認し、ノーヴェがウェンディに尋ねた。
「タイプゼロは捕獲だったな?」
「なんか、してもしなくても、どっちでもいいって言ってなかったスか?」
「そういうの一番困るんだよな。はっきりしてくれないと」
「悩む必要はない。連れて行って、ドクターの判断を仰ぐとしよう」
 チンクがスバルに手を伸ばす。その手を、突如飛来した鎖が阻んだ。
「そこまでだ!」
 ペガサスの意匠が施された白い鎧と、赤い服を着た少年が、ノーヴェたちの前に立ち塞がる。
「君たち、大丈夫?」
 駆けつけたもう一人が、スバルたちを気遣う。輝く薄紅色の鎧に、長い一本の鎖を両腕に巻きつけている。
(女の子?)
 スバルは朦朧とした意識で相手を見上げる。
「後は僕たちに任せて」
 肩まで伸びた緑色の髪に、綺麗な顔立ち。しかし、声はやや高めだが男のものだった。色といい、丸みを帯びた形状といい、鎧が女性的なので、ややこしいことこの上ない。
 二人の少年が肩を並べ、ナンバーズたちと対峙する。
「お前たち、聖闘士(セイント)か?」
 チンクが問いかける。
「ああ、そうだ。盗んだ黄金聖衣(ゴールドクロス)、耳をそろえて返してもらうぜ!」
 白い鎧の少年が、威勢よく言った。

 その頃、地上本部の指揮管制室は、大混乱に陥っていた。
「何故だ!? 何故、たった三人の賊が抑えられん!」
 指揮官が腹立ち紛れに机を叩く。
 モニターに表示されているのは、おびただしい数の倒された武装局員たち。このままでは全滅も時間の問題だ。
「システムの復旧はどうした!」
「もう少し時間がかかります!」
 戦闘機人の襲撃とほぼ同時に、本部のシステムがクラッキングを受けていた。建物内では隔壁が勝手に締まり、人々を中に閉じ込めている。エレベーターも使用不能だ。

201 :◆ce0lKL9ioo :2012/12/20(木) 23:40:38.29 ID:hrrYWm04
「とにかく残っている部隊の再編成を急げ。賊を絶対に中に入れるな!」
「それがとっくに入ってるんだな」
 場違いに明るい声が、耳元で囁く。指揮官は凍りついたように動きを止めた。いや、比喩ではなく、本当に凍りついていた。
 驚く管制官たちの前で、黄金の鎧を着た水色の髪の少女が、頭上で両腕を組み合わせた。前腕部の装甲が水瓶を形作る。
「オーロラエクスキューション!」
 振り下ろされた水瓶の先から、絶対零度の凍気が撃ち出された。室内が氷で覆い尽くされていく。
「手加減はしたから、多分死んでないよね。それにしてもすごい能力」
 氷の彫像と化した管制官たちを、ナンバーズ、セインは感心したように眺める。
 ミッドチルダとは別の世界に、聖闘士と呼ばれる正義の闘士たちがいた。彼らは星座の聖衣(クロス)を身にまとい、小宇宙(コスモ)と呼ばれるエネルギーを燃やし戦う。その拳は空を裂き、蹴りは大地を割る。
 八十八いる聖闘士の中でも、黄道十二星座を司る最強の黄金聖闘士(ゴールドセイント)に至っては、放つ拳は光速に達する。
 セインは自らがまとう水瓶座(アクエリアス)聖衣を愛しげに撫でる。苦労して盗み出した甲斐があったというものだ。
 かろうじて生き残ったモニターには、姉妹たちの姿が映し出されている。
 魚座(ピスケス)聖衣のチンク。射手座(サジタリウス)聖衣のウェンディ。獅子座(レオ)聖衣のノーヴェ。誰も彼も絶好調のようだ。
「ドクターはやっぱり天才だね」
 聖衣の胸部装甲の裏側に、結晶型の小型機械が取り付けられていた。
 聖衣にはこれまでの装着者の記憶が蓄積され、聖衣の意思を形成している。スカリエッティの開発したこの機械は、聖衣の意思に働きかけ、ナンバーズを本来の装着者に、敵対する者を邪悪な戦士と誤認させる。
 さらに黄金聖衣の持つ力を、体内に直接送り込むことで、装着者のコスモを強制的に覚醒させ、黄金聖闘士の域まで高めてくれる。
 コスモ自体はあらゆる人が持つエネルギーだが、習得には長く厳しい命懸けの修行が必要になる。スカリエッティの発明は、その過程を省略する画期的な物だった。
 難点は、黄金聖闘士ぎりぎりの力しか発揮できないことと、聖衣が男性用なので胸元が少々窮屈なことくらいだ。
「さてと、お仕事、お仕事」
 引き続き破壊工作と、内部の連中の足止めをしなければならない。セインは軽い足取りで、指揮管制室を出て行った。

 次元を超えて現れた白い鎧の少年、ペガサス星矢は、ナンバーズを見て、苦々しい表情を浮かべた。
「全員女かよ。やりにくいな」
「油断しないで、星矢。どんなからくりかわからないけど、彼女たちは黄金聖闘士の技が使えるみたいだ」
 薄紅色の鎧の少年、アンドロメダ瞬が鎖を構える。
 二人とも、聖闘士の中では最下級の青銅聖闘士(ブロンズセイント)だが、かつて黄金聖闘士と戦い勝利を収めたことのある猛者たちだ。
「わかってるよ」
 星矢と瞬が戦闘態勢を取る。
「面白ぇ。腕試しの相手になってもらうぜ」
 ノーヴェが右腕を前に突き出すと、機械が聖衣の意思から技のデータを読み取り再現する。
「ライトニングプラズマ!」
 光速拳が、連続で放たれる。
「燃えろ、俺のコスモよ!」
 星矢が叫び、黄金の拳の嵐の中に踏み込む。常人では視認することさえ不可能な連撃を星矢は紙一重でかわしていく。
「所詮はサル真似だな。本物のライトニングプラズマより、速度も精度も劣る!」
 ライトニングプラズマは一秒間に一億発の拳を相手に叩き込む技だ。しかし、ノーヴェのライトニングプラズマはそれより一万発少ない。
「聖闘士に同じ技は通用しない。まして劣化コピーなんて話にならないぜ!」
 星矢とノーヴェの隣で、瞬とチンクも戦闘を開始する。
「ピラニアンローズ!」
「ネビュラチェーン!」
 瞬の鎖が生き物のように動き、チンクの投げる黒バラを絡め取る。
「どうやら、あなたたちは全ての技を使えるわけではないようだね」
 チンクの黒バラはよく見ると、金属で出来た造花だった。威力の低下を武器で補ったのだろうが、これではピスケスの他の技、ロイヤルデモンローズとブラッディローズは使えない。

202 :◆ce0lKL9ioo :2012/12/20(木) 23:45:11.65 ID:hrrYWm04
 ピスケスの黄金聖闘士アフロディーテは、香気だけで人を死に至らしめる恐ろしい毒バラの使い手だった。しかし、毒バラを使うには、自らもその毒に耐えねばならない。技は真似できても、耐毒性まで再現はできなかったのだろう。ならば、恐ろしさは半減する。
 星矢の蹴りが、瞬の鎖が、ノーヴェとチンクを後退させる。
「これで終わりだ!」
 星矢が勢いよくノーヴェに接近する。ノーヴェはにやりと笑った。
「ライトニングプラズマ!」
「同じ技は……何!?」
 次にノーヴェが放ったのは、光速の蹴りだった。拳とは異なる軌道を描くそれを避けきれず、星矢が天高く蹴り上げられる。
「私は蹴りの方が得意なんだよ!」
 ノーヴェの足元から、光の道が螺旋を描いて伸び、空中にいる星矢を取り囲む。ノーヴェの能力、エアライナーだ。
「聖闘士は飛べないんだよな」
 ノーヴェは光の道を駆け、落下しようとする星矢をサッカーボールのように蹴り上げていく。空中では、星矢に防御以外の選択肢はない。
「星矢!」
「余所見をするとは余裕だな。IS発動ランブルデトネイター」
 チンクが指を弾くと、鎖に絡め取られていた黒バラが爆発を起こす。
「うわぁああああああっ!」
 チンクのISは無機物を爆発物に変える。バラを造花に変えたのはこの為だった。
「私たちの技を、劣化コピーと言ったな」
 チンクは両手に新たなバラの花を構える。
「認めよう。しかし、我らにはそれを補う別の能力がある!」
 聖闘士は相手の技を見切ること得意とする。しかし、それは相手も同じコスモの使い手だからだ。異なる原理で動く戦闘機人のISを、容易く見切ることはできない。
 黒バラが、瞬の周囲で次々と爆発する。鎖と聖衣で多少軽減されているが、爆風が瞬をその場に縫いつける。
「そろそろ私も参加させてもらうっス。ISエリアルレイブ」
 サジタリアスの翼が発光し、星矢とノーヴェを追いかけて飛ぶ。
 ウェンディのISは、固有装備のライディングボードを扱う為のものだが、今はサジタリアス聖衣と連動している。元々若干の飛翔能力を持っていたサジタリアスの翼と、ウェンディのISの相乗効果により、自在に飛行が可能となっていた。
「同じ技は通用しない。なら、見たことない技ならいいんスよね」
 ウェンディがコスモを右拳に集中させる。
「アトミックサンダーボルト!」
 サジタリアスの黄金聖闘士アイオロスはすでに故人であり、星矢たちは実際に会ったことがない。まして、その技を知るはずがない。
 ウェンディの光速拳が迫る。
「エクセリオンバスター!」
 星矢の背後から発射された桜色の光線が、ウェンディの拳と激突し、威力を相殺しあう。
「!?」
 ノーヴェとウェンディの攻撃の手が止まる。
 地面へと落下を始めた星矢の体を、誰かが受け止めた。
 星矢は痛みに顔をしかめながら、助けてくれた相手を仰ぎ見た。
「あんたは?」
「私はなのは、高町なのは」
 白を基調としたバリアジャケット。栗色の髪は白いリボンでツインテールにまとめられ、左手には赤い宝石がついた長い杖を持っている。
「話は後で。まずはこの状況をどうにかしないと」
 なのはは険しい面持ちで、ナンバーズたちを見据えた。

203 :◆ce0lKL9ioo :2012/12/20(木) 23:51:47.80 ID:hrrYWm04
以上で投下終了です。
星座名とコスモは初回のみ漢字で、後はカタカナで書きます。その方が雰囲気が出そうだったので。
次回後編は多分来週ぐらいに投下できると思いますが、それ以降はゆっくりとしたペースになると思います。
それでは、また。

204 :一慰:2012/12/21(金) 00:39:46.61 ID:OXNBcwWH
無限

205 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/21(金) 01:16:09.24 ID:PbQOVQpQ
乙。
聖闘士星矢クロスは“時空を超えた〜”がエタったので歓迎モノ
ただ内容がやや詰め込み過ぎかも、もう少し余裕をもってもいいかと

206 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/23(日) 10:50:30.43 ID:9xeJNlW3
気になったんだけど、多重クロス(スパロボのような)って基本的にはあまり歓迎されてないのかな?
某ディケイドの例があるとは言え、作者如何によっては面白い作品になることもあり得ると思うんだけど。

207 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/23(日) 13:34:31.76 ID:t32U+WA9
>>206
リリカルをメインにしずらい、ってのもがあるんじゃない?
スーパーロボット軍団も動乱など外伝以外はUCガンダムとストパンメインっぽいし

208 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/23(日) 14:33:32.07 ID:zoll0b5H
>>206
単純に書く難易度が高い
クロスさせる作品が増えるほど色々と作業量が増えるからね
その為に未完で終わる可能性が高いから敬遠されやすい

209 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/23(日) 16:33:36.48 ID:9xeJNlW3
>>207-208
返答ありがとう。そうだね、戦場のヴァルキュリア・BLEACH・幻想水滸伝U・スパイラル〜推理の絆〜
から一人ずつ登場させてクロスさせたかったんだけど、1作品に絞った方がよさそうかな

210 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/24(月) 00:09:53.98 ID:2Kkrx4U3
支援

211 :◆ce0lKL9ioo :2012/12/27(木) 22:27:46.92 ID:UAxge6qP
>>205
その通りですね。すべて書かなければいけないという考えに囚われすぎていたようです。
以後、気をつけます。
本日、23時半より『リリカル星矢StrikerS』第二話投下します。

212 :◆ce0lKL9ioo :2012/12/27(木) 23:37:27.47 ID:UAxge6qP
それでは時間になりましたので、投下開始します。

   第二話 襲撃、黄金の闘士たち(後編)

 時空管理局地上本部から遠く離れた森の中に、騎士ゼスト、ルーテシア、アギトが潜んでいた。
 ロングコートを着た大柄な男、ゼストは目を凝らし、地上本部で繰り広げられる戦闘を観察する。わずか数名の戦闘機人が、局の魔導師たちを蹂躙して回っている。数日前には考えられなかった光景だ。
「スカリエッティめ、いつの間にあれだけの力を得た?」
 ゼストは眉間のしわを険しくする。一応、協力関係にあるが、ゼストはスカリエッティを毛嫌いしていた。
「ルーテシアは何か聞いていないか?」
 紫色の髪をした寡黙な少女ルーテシアは、無言で首を横に振る。
「ちっ。あたしらを無視するなんて、偉くなったもんだぜ」
 ルーテシアの頭上に乗った手の平サイズの少女、ユニゾンデバイスのアギトが、忌々しげに吐き捨てた。悪魔のような翼と尻尾を生やして、露出度の高い恰好をしている。
 これまでのスカリエッティなら、大がかりな作戦の時は必ずゼストたちに協力を求めてきた。
 こちらからスカリエッティに連絡を取ろうとしたが、作戦行動中だからかつながらない。
「俺たちは必要ないということか。まあいい。好都合だ」
「旦那、行くのか?」
「ああ」
 ゼストはかつて一度に死に、スカリエッティの手によって蘇った人造魔導師だ。彼の目的は、かつての友レジアスに会い、己の死の真相を知ること。
 レジアスは地上本部にいるはずだ。この好機を逃す手はない。
「ルーテシアはここで待っていろ」
「……私も手伝おうか?」
「いや、アギトもいるし大丈夫だ。行ってくる」
「おうよ。旦那は私が守ってやるよ」
 歩き出そうとしたゼストのコートの裾を、咄嗟にルーテシアは握りしめていた。
「どうした?」
 ルーテシアらしからぬ行動に、ゼストは軽く目を見張る。ルーテシアもそれは同じだったようで、自分の手を不思議そうに見つめ、裾を離した。
「……何でもない」
「そうか。では。大人しく待っているんだぞ」
 ルーテシアを安心させようと、ゼストは武骨な顔に笑みを浮かべる。
 出発するゼストの背を、ルーテシアは不安げに見送る。
 ここで別れたら一生会えなくなる。そんな不吉な予感を、ルーテシアは必死に押し殺していた。

 エリオたちからデバイスを受け取ったなのはたちは、別れて行動を開始した。
 シグナムは本部内に侵入した敵の迎撃へ。はやては、判明している限りの戦闘機人の情報を現場に伝えている。
 そして、なのははスターズ分隊の応援へと向かい、ナンバーズと戦う星矢たちと出会った。
 なのはは戦闘態勢を維持したまま、ゆっくりと高度を下げ、星矢を地面に下ろす。
 ナンバーズの動きを、なのはは目で捉えられなかった。先程のエクセリオンバスターは、星矢への執拗な攻撃を阻止できればと撃っただけで、敵の必殺技を相殺できたのは完全に偶然だ。
 なのはは星矢と瞬を窺う。正体は知れないが、彼らは味方のようだ。協力してこの場を切り抜けるしかない。
「君たち、私が攻撃するまでの時間稼ぎ、お願いできる?」
「任せておけ。もうあんな無様な真似はさらさないぜ」
 星矢が親指を立てた。どうやら協力関係成立のようだ。
 なのはが魔力チャージを始めると同時に、チンクが動いた。
「ピラニアンローズ!」
「ローリングディフェンス!」
 瞬の鎖が回転し黒バラを防ぐ。
 ウェンディとノーヴェが星矢に迫る。
「はあぁあああああっ!」
 星矢の両腕がペガサス星座十三の軌跡をなぞる。

213 :◆ce0lKL9ioo :2012/12/27(木) 23:38:47.49 ID:UAxge6qP
「ペガサス流星拳!!」
 毎秒百発以上の音速拳を繰り出す星矢の必殺技。しかし、星矢のコスモの高まりに応じて、その速度はライトニングプラズマに匹敵するものになっていた。
「くっ!」
 流星拳を、ウェンディとノーヴェが両腕を交差させてブロックする。
「二人とも、どいて!」
 なのはが叫び、杖型デバイス、レイジングハートを構えた。星矢と瞬がその場から飛び退く。
「スターライトブレイカー!!」
 なのはの切り札、集束砲撃が大地を焼き尽くす。
「すげぇな」
 すぐそばを通過する桜色の光の奔流に、星矢は舌を巻いた。あまりの火力に大気まで震えていた。
 やがて光の奔流が過ぎ去ると、射線からわずか外側で、黄金の鎧が白煙を上げているのが見えた。
「てめえら、もう容赦しねぇぞ」
 ノーヴェがよろめきながら立ち上り、怒りを露わにする。
「直撃は、しなかったみたいだね」
 なのはが悔しげに言った。それなりのダメージを与えたが、戦闘不能には程遠い。
 なのはたちは第二ラウンドに備えた。

 その頃、ライトニング分隊隊長フェイトは、エリオとキャロをつれて機動六課へと急行していた。フェイトの金色の髪と白いマントが夜風にはためく。
 数分前に、機動六課が敵に襲撃されているという連絡があった。それ以来、六課との通信が途絶している。
(ヴィヴィオ、みんな、お願い、無事でいて)
 先日、後見人になったばかりの赤と緑の瞳の少女と、隊のみんなの無事をフェイトは祈る。
「すいません。私たちが隔壁の突破に手間取ったばかりに」
 白銀の飛竜フリードリヒに跨るキャロが、申し訳なさそうに言った。キャロの後ろに座るエリオも同じ顔をしていた。
「二人のせいじゃないよ。とにかく急ごう」
 フェイトはさらにスピードを上げ、海上を飛ぶ。
「止まって!」
 フェイトが叫び、急停止する。目の前を魔力弾が通過して行った。
 弾の来た方向に目をやると、二人の女が空に浮いていた。
「あなたを先に通すわけにはいきません」
 牡牛座(タウラス)の聖衣を身につけた大柄な女性、ナンバーズ、トーレと、全身に武器を装備し、両腕に盾をつけた天秤座(ライブラ)聖衣のセッテが、フェイトたちの行く手を阻む。
 フェイトはナンバーズたちに敵意を向ける。
 黄金の闘士たちの強さは、ヴィータから聞き及んでいる。もっとも、フェイトたちは、その後ヴィータが撃墜された事実を知らないが。
「エリオとキャロは先に行って。こいつらは私が引き受ける」
「でも」
 キャロが食い下がろうとするが、エリオが肩をつかんで制止する。
「僕たちがいても、フェイトさんの邪魔にしかならない」
 エリオの空戦能力は限定的であり、キャロのフリードも巨体ゆえに小回りが利かない。高速機動を得意とするフェイトと連携を取ることは難しい。
「……わかりました」
 キャロが手綱を操り飛竜フリードを前進させる。
 エリオとキャロが離脱していくのを、トーレたちは黙って見送る。目標はフェイト一人らしい。
「セッテ、初陣のお前には悪いが、ここは譲ってくれ」
「わかりました」
 トーレが腕組みをしたままフェイトと正面から向かい合う。その兜から生える黄金の牛の角は片側が半ばから折れていた。
(様子見をしている余裕はない!)
 フェイトの能力限定はすでに解除されている。リミットブレイク、真・ソニックフォームを発動させる。バリアジャケットがレオタード状のものに、デバイスのバルディッシュが二振りの剣に変化する。
 速度と攻撃力が格段に上昇するが、防御力が極端に落ちる諸刃の剣だ。
 フェイトは電光石火で間合いを詰め、大上段からバルディッシュを振りかぶる。その時、トーレがにやりと笑った。

214 :◆ce0lKL9ioo :2012/12/27(木) 23:41:44.48 ID:UAxge6qP
「グレートホーン!」
 トーレが腕組みから、居合いのように両腕を突き出す。同時に、フェイトのバルディッシュが閃光を発した。
野牛の突進の如き衝撃波が、フェイトを海面に叩きつける。トーレの腕組みは自信の表れではなく、攻防一体の構えなのだ。
 目くらましのせいで、グレートホーンの狙いがわずかにずれたようだが、真・ソニックフォームの防御力では、かすめただけでも撃墜は免れない。
「無駄なあがきを」
 トーレが閃光でくらんだ目を何度か瞬きさせると、すぐに視力は回復した。
 フェイトが沈んだ海面は、しばらく波打っていたが、やがて静かになる。
トーレとセッテはそれきりフェイトに興味を失ったように、その場から飛び去っていった。

「フェイトさん?」
フリードに座ったまま、エリオは不安げに背後を振り返る。だが、フェイトの姿は闇にまぎれてもう見えない。嫌な予感が胸中にわだかまるが、今は六課へ急ぐことにする。
前方の空が赤く染まっている。六課隊舎が炎に包まれているのだ。
立ち昇る黒煙の中で悠然とたたずむのは、牡羊座(アリエス)の聖衣をまとった中性的な顔立ちのナンバーズ、オットーと、山羊座(カプリコーン)の聖衣をまとったディードだった。
 オットーたちの足元には、蒼い狼ザフィーラと緑の衣を着たシャマルが倒れている。
 ディードは一人の少女を脇に抱え連れ去ろうとしていた。なのはとフェイトをママと慕う少女、ヴィヴィオだ。
それを見た途端、エリオの顔から血の気が引いていく。
エリオは死んだ息子の代わりに違法に生み出されたクローンだった。保護の名目の元、親元から無理やり引き離された過去と、今のヴィヴィオの姿が重なる。
「うわぁあああああああーっ!」
 エリオの槍型デバイス、ストラーダがフォルムツヴァイに変化する。魔力をロケットのように噴射し、エリオはディードめがけて一直線に突撃する。
 ディードはエリオの突撃を軽くいなすと、無防備な首筋に肘を打ち下ろす。一撃で意識を刈り取られ、エリオが突進の勢いのまま地面を派手に転がる。
 ディードはキャロに視線を投げると、ヴィヴィオを炎の届かない安全な場所に寝かせた。
「エリオ君!」
 フリードがブラストレイを放つ。フリードの炎は、オットーの眼前で透明な壁に遮られる。
「クリスタルウォール」
 透明な壁が、ブラストレイをそのままフリードに撃ち返してくる。アリエスの技、クリスタルウォールはあらゆる攻撃を反射する。
 ブラストレイの炎が、キャロとフリードの視界を塞ぐ。その隙に、ディードが接近していた。
「エクスカリバー」
 ディードの手刀がフリードの胸を深く切り裂く。
 血しぶきを舞わせながら、フリードが大地に墜落する。投げ出されたキャロは、痛みを堪えながら顔を上げた。
「抵抗をやめてください。我々の目的は施設の破壊と、聖王の器の確保のみ。無駄な流血は望むところではありません」
 淡々とディードが言った。
 聖王の器がヴィヴィオを指していることは、疑いようがない。
「……させない」
 キャロの足元に巨大な魔法陣が出現する。
「ヴォルテール!」
 魔法陣から、天まで届くような大きさの黒竜が召喚される。
「これは……!」
 意表を突かれたオットーとディードが、ヴォルテールの巨大な尾でなぎ払われ、建物の外壁に叩きつけられる。
「くっ!」
 ヴォルテールが咆哮し、ギオ・エルガを放つ。
 オットーがクリスタルウォールを展開する。だが、ヴォルテールの業火を反射しきれず、表面に蜘蛛の巣のような亀裂が走る。砕けるのは時間の問題だ。オットーの顔に焦りがにじむ。
「廬山百龍覇!」
 百の龍の牙が、真横からヴォルテールを襲い、片膝をつかせた。
「お前たち、無事か?」
 トーレとセッテが、オットーたちの隣に降り立つ。オットーがこくりと頷く。

215 :◆ce0lKL9ioo :2012/12/27(木) 23:43:21.80 ID:UAxge6qP
 キャロがショックを受けたように口元を両手で覆った。
「そんな……じゃあ、フェイトさんは?」
 信じたくはないが、ここにトーレたちが来たということは、フェイトが倒されたということだ。戦えるのは、もうキャロしか残されていない。
(ううん。フェイトさんはきっと生きてる! ヴィヴィオとエリオ君は私が守らないと!)
 弱気になる己を必死に奮い立たせる。キャロの戦意に反応し、ヴォルテールが巨大な足で、トーレたちを踏みつぶそうとする。
「さすがにこのでかぶつは厄介だな」
 トーレがヴォルテールを苦々しく見上げる。
「これを使ってみましょう」
 セッテのライブラ聖衣から、武器が射出される。
 トーレガスピアを、ディードがソードを、オットーがトンファーを、セッテがトリプルロッドを装備する。
「はぁああああああーっ!」
 星をも砕くと称される黄金の武器が、一斉にヴォルテールに炸裂する。
「ヴォルテール!」
 悲痛な咆哮と共に、満身創痍となった巨体が轟音を立てて大地に沈む。
「戻って!」
 これ以上の戦闘は命に関わる。キャロが慌ててヴォルテールを送還する。
「竜を失った竜召喚士とは哀れですね」
 キャロの戦意がまだ潰えていないことを感じ取ったのだろう。ディードが手刀を構えていた。
 フリードにあれほどの深手を負わせた一撃だ。キャロに防ぐ術はない。
「エクスカリバー」
 聖剣の名を冠した手刀が無情にも振り下ろされた。

 ビルの屋上に、二人の女が待機していた。ここからだと地上本部がはるかかなたに霞んで見える。
 蟹座(キャンサー)の聖衣をまとい、大きな丸眼鏡をかけたナンバーズ、クアットロ。
 兜の両脇に善と悪の仮面を張りつけた双子座(ジェミニ)の聖衣と、巨大な大砲イノーメスカノンを装備したディエチ。
『準備できたよ』
「了解」
 内部に潜入しているセインから連絡が来る。
 地上本部は、中央の超高層タワーと、その周囲のやや低い数本のタワーによって構成され、そのすべてが強固な魔力障壁によって守られている。
 ディエチはイノーメスカノンの照準を、低いタワーの一つに合わせる。そのタワーだけは内部の隔壁が下りておらず、中にいた者は残らず退避していた。
「IS発動へヴィバレル」
 ディエチのISとコスモが融合し、砲弾を形成する。星々を砕くと称される力が、イノーメスカノンの中で脈動する。
「ギャラクシアンエクスプロージョン」
 発射された砲弾が、目標のタワーをバリアごと粉々に砕く。崩れ落ちるタワーの残骸と舞い上がる土煙が、ここからでもはっきりと観測できた。
「着弾を確認。これで任務完了だよね?」
「ええ、そうよ。まったく暇でいけませんわ」
 クアットロが、あくびしながらコンソールをいじる。一応、本部のシステムにクラッキングをかけているが、そんなものが必要ないくらいナンバーズは圧倒的だった。
「それより、クアットロ。移動しなくていいの?」
 ディエチたちの居場所は、今の一撃で知られたはずだ。このままでは敵がやってきてしまう。
「いいのよ。少しは私も楽しませてもらわないと」
 折しも、雲間から十名ほどの魔術師が接近してくるのが見えた。本部の救援に向かっていた連中が、こちらに気がつき進路を変えたのだろう。
 クアットロが獲物を前にした毒蛇のように笑い、魔導師たちに人差し指を突きつけた。
 危険を察知した魔導師たちがバリアを展開する。
「積尸気冥界波」
 歌うようなクアットロの声がしたかと思うと、突然魔導師たちがもがき苦しみ出した。白い靄の様なものが、魔導師たちから飛び出し、暗い空間へと吸い込まれていく。
 相手の魂を直接冥界へと送り込むキャンサーの必殺技だ。この技の前では、バリアは意味をなさない。
「ちょっと、クアットロ!」
 ディエチがクアットロの腕を押さえる。
「ドクターの命令では、できる限り人命を奪うなって……」
 クアットロに冷たい眼差しを向けられ、ディエチの言葉は徐々に尻すぼみになっていく。

216 :◆ce0lKL9ioo :2012/12/27(木) 23:45:34.37 ID:UAxge6qP
「わかってないのね、ディエチちゃん。ドクターの命令は、価値がある命を奪うなってこと。あんな虫けら、生きてたって何の価値もないでしょう?」
 きりもみしながら墜落していく魔導師たちの死体が、最高の娯楽だと言わんばかりにクアットロは笑っていた。虫の命の価値など、せいぜい死に様で楽しむくらいしかない。
「……クアットロ?」
 狂ったように高笑いを続ける姉を、ディエチは怯えたように見つめていた。

 ディードの手刀が振り下ろされた瞬間、キャロは覚悟を決めて目を瞑った。
 しかし、痛みはいつまでたってもやってこない。
「その程度か」
 聞き慣れない声に顔を上げると、長い黒髪が風になびいていた。
 キャロを助けてくれたのは、龍の意匠が施された濃緑の鎧をまとった少年だった、隣には冷気に覆われた白鳥の鎧をまとった金髪の少年がいる。
 ドラゴン紫龍とキグナス氷河。星矢の仲間の青銅聖闘士たちだ。
 紫龍の左腕の盾が、ディードの手刀を防いでいた。
「その程度で聖剣を騙るとは笑止千万!」
 紫龍が怒気と共にディードを弾き飛ばす。
「ほう、聖闘士が紛れ込んだか」
 トーレが言った。
「だが、たった二名で勝ち目があるかな?」
「それはどうかな」
 海側から人影が歩いてくる。
「フェイトさん!」
 キャロの顔が喜びに輝く。炎に照らし出されたその姿は、まさしくフェイトだった。
「私はまだ墜ちていない」
 トーレが驚愕に目を見開く。グレートホーンは確実に命中したはずだ。あの装甲で無事なはずがない。
 グレートホーンが炸裂する直前、フェイトの第六感が警告を発した。トーレの態度が、まるで敵が罠にかかるのを待っているかのようだったからだ。
 咄嗟にバルディッシュが閃光による目くらましを行い、その隙に真・ソニックフォームを解除、バリアを展開しどうにか撃墜を免れた。
 フェイトとキャロが紫龍たちと並び、戦闘態勢を取る。
「数では互角。これで勝負の行方はわからなくなったな」
 フェイトははったりをかます。
 撃墜されなかっただけで、グレートホーンによるダメージは深刻だ。バルディッシュを構えていることさえ辛い。痙攣しそうになる両腕を意志の力で抑えつけ、相手が退いてくれるか、増援が来るまでの時間を稼ぐ。
『そこまでです』
 落ち着いた声音と共に、映像が空中に投影される。映し出されたのは、乙女座(バルゴ)の聖衣を着たナンバーズ長姉たるウーノ。
『各自、撤退を開始してください』
 フェイトの祈りが通じたのか、ウーノの指示に従い、トーレたちが撤退していく。
 紫龍たちが追いかけようと一歩踏み出すが、思いとどまる。深追いは危険の上、飛行する相手の追跡は難しいと言わざるを得ない。
「フェイトさん、大丈夫ですか?」
「平気だよ、キャロ」
 キャロの気遣いに、フェイトが虚勢を張る。
「それより、みんなを助けないと……」
 炎が六課隊舎を飲み込もうとしている。だが、突入できる体力はフェイトには残っていない。
「俺に任せろ」
 氷河が白鳥の羽ばたきを思わせる構えを取った。氷の結晶が氷河の周囲を漂う。
「ダイヤモンドダスト!」
 氷河が拳から凍気を放つ。氷河が連続でダイヤモンドダストを放つと、火災が瞬く間に収まっていく。
「行くぞ、紫龍」
「ああ」
 鎮火した建物の入り口は、がれきによって塞がれていた。
「廬山昇龍覇!」
 廬山の大瀑布をも逆流させる紫龍の右アッパーががれきを粉砕する。
 氷河と紫龍が建物内へと入っていく。二人の精力的な人命救助により、機動六課の死者数は奇跡的にゼロになった。
 
 ナンバーズが撤退し地上本部の隔壁が解放されると、レジアス・ゲイズ中将は直ちに自屋に戻った。
 窓の外では、大画面に表示されたスカリエッティが、犯行声明を行っていた。
 不遇な技術者たちの恨みの一撃だの、自らが生み出した戦闘機人の自慢などを滔々と語るスカリエッティを、レジアスは忌々しげに睨みつける。
「ええい、何故、連絡が取れん!」

217 :◆ce0lKL9ioo :2012/12/27(木) 23:47:23.48 ID:UAxge6qP
 通信機をいじりながら、大声で怒鳴る。
「すでに回線を変えられているようです」
 部下の女性が言った。オーリスや他の部下たちは被害の確認に奔走している。現在付き従っているのは、地味な容貌のこの女一人だけだ。
 スカリエッティとレジアスは裏でつながっている。しかし、それはあくまで地上の平和を守るために、レジアスがスカリエッティを利用しているだけで、その逆など決してあってはならない。
 レジアスはビヤ樽の様な体を揺すりながらイライラと歩き回り、部屋の隅に置いてあった大きな四角い布の包みに、足を引っ掛けた。
「なんだ、これは!?」
「新しく届いた機材です。お邪魔でしたら、すぐに片付けますが?」
「そんな些事は後にしろ! それより……」
「久しぶりだな、レジアス」
 扉を開けて、ゼストが入ってくる。
 レジアスは、かつての友が蘇ったことを知らない。あれだけ猛り狂っていた心がすっと冷え、文字通り幽霊を見たかのように顔を青ざめさせる。
「ゼスト、何故、お前が?」
「お前に聞きたいことがあって来た」
 ゼストは大股でレジアスに近づいていく。アギトには邪魔が入らないよう廊下で見張ってもらっている。
 ゼストは壁際に立つ部下の女を一瞥した。できれば一対一が良かったが、さすがにそこまで望むのは贅沢なようだ。見たところ、戦闘能力は低そうなので、害はないだろう。
 レジアスは恐怖に震えながら後退する。
「お前は……」
 ゼストが問いを口にしようとした瞬間、レジアスの胸を突き破り、鋭い刃物が飛び出した。
「レジアス!」
 部下の地味な容貌が一変していた。
 蠱惑的な顔立ちに、右手には鋼の長爪ピアッシングネイルを装備し、青いボディスーツに身を包んでいる。
 ナンバーズ、ドゥーエ。ISライアーズ・マスクによって、他者になりますことができる。
「あなたの存在は、今後のドクターに取ってお邪魔ですので」
 ドゥーエが微笑み、ピアッシングネイルをさらに深く抉りこむ。鮮血がレジアスの制服を赤く染め上げる。
 レジアスは言葉を紡ごうと、口を開く。しかし、一音も発することもなく事切れた。
「貴様!」
 ゼストはフルドライブを発動し、渾身の力で槍を斬り下ろす。槍と斬り結んだピアッシングネイルが金属音を響かせて砕け散る。だが、ドゥーエは余裕の表情を崩さない。
「刃向うのですか? どうやら、苦痛の果ての死がお望みのようですね」
 ドゥーエは部屋の隅に置かれていた荷物の布をはぎ取る、精緻な文様が施された四角い箱が開き、中から黄金のサソリのオブジェが姿を現す。
 オブジェが分解しドゥーエに鎧となって装着される。蠍座(スコーピオン)の黄金聖衣だ。
 ドゥーエは砕けたピアッシングネイルを脱ぎ捨てる。露出した右人差し指の爪が、長く鋭く伸びていた。色は血を染み込ませたような紅。
「スカーレットニードル!」
 サソリの毒針が、真紅の衝撃となってゼストを貫いた。

 レジアスの部屋に入ったアギトとシグナムは、あまりの惨状に言葉を失った。部屋が一面血の海と化している。
「スカーレットニードル・アンタレス」
 ドゥーエは静かに呟き、ゼストの心臓から真紅の爪を引き抜いた。聖衣も顔も返り血で真っ赤に染まっている。
 ゼストの体には十五個の穴が開き、致死量をはるかに超える血が溢れだしていた。部屋の血はほとんどゼストのものだ。
「旦那!」
 ゼストの元へ行こうとするアギトを、シグナムが制止した。迂闊に近づけば、アギトの命も即座に摘み取られる。
「賢明ですね。それでは、失礼します」
「……待てよ」
 奇妙に感情の抜け落ちたアギトの声に、ドゥーエは足を止めた。
「一つだけ教えろ。旦那は、旦那はそこの親父と話し合えたのか?」
「いいえ。その前に殺してしまいました」
「そっか」
 アギトは顔を上げ、憎悪に燃える瞳でドゥーエを睨みつけた。
「なら、お前は私が殺す。どんな手を使ってもだ!」
 ドゥーエはアギトを一瞥すると、窓ガラスを破り外へと身を躍らせる。とてもではないが、シグナムが追跡できる速度ではない。
「間に合わなかったか」
 ゼストとレジアスの死体を見て、シグナムが悔しげに顔を歪める。
 ささやかな願いを踏みにじられ、どれだけ無念だったのだろう。ゼストの死に顔は、怒りと絶望と後悔が複雑に混ざり合い、とても安からと言えるようなものではない。
 室内はむせかるような血臭と、アギトの嘆きの声に満たされていた。

218 :◆ce0lKL9ioo :2012/12/27(木) 23:49:23.36 ID:UAxge6qP
以上で投下終了です。
それでは、また。

219 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/08(火) 13:34:33.75 ID:XYhjolZr
旧版アルシャードとクロスしてなのは達なら大ラグナロクを止められるだろうか?

220 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/08(火) 14:46:14.30 ID:ourZw5m+
今回の牛は噛ませならずにすみそうだ
いやある意味噛ませ確定みたいなもんだけど強キャラしてて嬉しい

221 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/10(木) 15:37:44.86 ID:oBsi7a1u
なんかまたなのはキャラでバトロワするみたいだぞ
今度は原作基準でやるみたいだが

http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13744/1357797338/

222 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/10(木) 18:30:08.50 ID:bwJ1qEm9
≫219
宇宙破壊とか時間軸を無視して行動とか出来ないと戦力外のハイパーインフレだぞw

223 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/10(木) 21:16:42.79 ID:a3+nZZoH
>>221
前回とは違って今回はこのスレとは無関係じゃん

224 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/12(土) 23:05:48.50 ID:A/M4zmtx
>>222
なのは達ではアインヘリアルにすら達してないだろうからな。

225 :マクロスなのは 忍法帖【Lv=23,xxxPT】(1+0:8) ◆fN6DCMWJr. :2013/01/13(日) 17:55:21.00 ID:ZvRgQol5
こんにちは〜
9ヶ月ぶりに私は帰ってきたぁ!
21時頃にマクロスなのはの31話を落としますので、よろしくです〜

226 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2013/01/13(日) 21:03:20.89 ID:ZvRgQol5
それでは時間になったので投下を開始します〜

マクロスなのは第31話「聖剣」

EMP攻撃から数分後 電脳空間

フォールド波から電子の流れまで、全ての事象を解析・表示する電脳空間から事件を眺めていたグレイスは、先ほど災害現場に到着したらしいブレラの呼びかけに耳を傾ける。

「どうした?」

『周囲にフォールドネットの原始的生成を検知しました』

「ん?それはどういうことだ。ブレラ・スターン」

もちろん彼のセンサー情報はこちらでもリアルタイムで確認しているが、このように言語を介すのは、体を機械に置き換えてなお残る習慣であった。
こちらに問いにブレラは迷うことなくバジュラのEMP攻撃によって、置物と化していた車両のボンネットを剥がす。そしてパッと見回すと、電子の瞳でただ一点"バッテリー"を凝視する。

『・・・・・・この物質がフォールドクォーツへと変化するのを確認しました』

「バッテリーがフォールドクォーツに・・・・・・。ふふふ、了解したわ。命令変更、直ちにそのサンプルを採取し、帰還しなさい」

『ヤー』

短い応答と共に、彼は腕の単分子ブレードで車からバッテリーを分離させ、VF-27の待つ海岸への帰路についた。


5時間後 ミッドチルダ沖合20km 海上

「あれから5時間でまだこれかい?」

仮眠していたのか髪をボサボサにしたギャビロフは、損害報告モニターの表示に非難の声を上げる。

「面目ない・・・・・・」

はんだごて片手に電子基盤と格闘する部下が、小さく謝罪した。

「まったく・・・・・・それで、修理はどうなったんだい?」

「EMPでかき回された電子系は大方復旧できました。通信の方ですが、これを見る限りこっちは故障じゃないみたいです」

次元海賊「暁」所属、輸送艦「キリヤ」は次元空間からのワープアウト直後に謎のEMP攻撃を受けて航行不能に陥り、緊急浮上。そこで応急修理を行っていた。しかし浮上から5時間が
たった今も、迎撃どころか管理局のレーダー波すら飛んでこないことを怪訝に思っていた。

「じゃあ、やっぱりアレ≠ェ動いちまったせいなのかい?」

「ええ。EMPで壊れた拍子に動いてしまったみたいなんで、今わかってるだけでもクラナガン全域をジャミングしてしまったみたいです。効果が予定通りなら、電磁波通信は明日までで
きないと思います」

「切り札のつもりだったけど、仕方ないね・・・・・・。それで、アマネからの連絡は?」

「はい、地上局の工作員経由の連絡によればなんですが・・・・・・」

「どうしたんだい?」

227 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2013/01/13(日) 21:03:56.64 ID:ZvRgQol5
「それが・・・・・・合流ポイントに、この近くのネズミーランドを指定して来まして・・・・・・」

「あの子、遊びに来てるつもりなのかね・・・・・・」

海賊の首領たるギャビロフも少なくとも科学技術に関しては天才である部下の考えを読みかねて頭をかかえた。


事件翌日 フロンティア基地航空隊 格納庫

そこでは昨日の戦闘で傷ついた機体の補修作業が夜通し行われ、機体を失ったアルトも朝から他の機体の補修作業を手伝っていた。

(そろそろ時間か)

見上げた時計は0945時を示している。
昨日眠い頭にムチ入れつつ、ミシェルの言う通りに田所に連絡を入れていたアルトは、

「1000時までに技研に」

と言われていた。
そんな中、元VF-25専属整備士だったシュミットが、ぼこぼこになったVF-1Bの整備の傍ら聞いてきた。

「ところで昨日から休暇でどっかいっちまった諸橋が、隊長に聞きたいって言ってたことがあるんです」

「諸橋・・・・・・ああ、あの同性愛の新人か」

「え、ええ。まぁ、それでこいつらのエンジン周りのことなんですが、ここにいる連中にはわからない問題だったんで」

「・・・・・・俺にわかるのか?それ?」

「うーんどうでしょう。えっとコイツだと・・・・・・ここか。このブラックボックスのことなんですよ」

シュミットは整備していたVF-1のエンジンカバーをあけて、その箱を指差す。

「諸橋がVF-25にはこんなものついてないのに、他の機体には全部着いてる。どうして必要なんですか?って」

「ああ。そいつは確かメーカーが魔力炉のバックアップ回路が入ってるって触れ込みで、つけたんじゃなかったか?」

「はい。そこまでは我々でも分かるんですが、やっぱりそれ以上のことは分かりませんか?」

「・・・・・・そうだな。ここだけの話だが、VF-25なら魔力炉からの供給がなくても緊急時には質量兵器としての各種兵装が使えるから着けなかったって事ぐらいか」

「なるほど。やっぱりアレ、元質量兵器だったんですか」

「まぁな。黙ってたが、いい加減察していただろ?」

「ええ。主翼の付け根の銃口も観測機器って聞いていましたが、航法システムに全く干渉してこないし、カバー開けたら機器銘板に『25mm荷電粒子ビーム機銃』って書いてありました
から」

まぁ、管理局の封印を見てなんとなく事情はわかりましたけど。とシュミットは苦笑しながら付け足す。
管理局でのバルキリーの運用にはこうした明文化されていない察しを要求するところが多い。本来の技術開発をすっ飛ばして設計図から入ったり、自分のような次元漂流者の機体を
改造して使ったりだから仕方ないのだが、いつかこのことがネックになる時が来そうだと漠然と思った。

「まぁ、そういうことだ。10時に技研に行く予定があるから、ついでに聞いてこようか?」

「そうしてもらえるとありがたいです。でも10時に技研に、ですか?もう50分過ぎてますけど」

228 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2013/01/13(日) 21:04:53.89 ID:ZvRgQol5
「ん?バルキリーなら130キロぐらいひとっ飛び─────」

そこまで言って気づいた。

(俺、VF-25墜としちゃったじゃん!)

途端に冷たい汗が背を伝う。

(いろいろ準備しなきゃいけないし、格納庫の予備機は・・・・・・勝手には使えないよな。EXギアでは・・・・・・だめだ。なのは達ならともかく、俺には音速は出せない。遅刻すると伝えるし
かないか・・・・・・)

そこでシュミットがこちらの思考に気づいたのか、代替案を提案してきた。

「確か天城二尉が技研に出向になるそうで、出発が10時だったかと。今ならバルキリーの発進を早めればあるいは・・・・・・」

「それだぁ!サンキュー、シュミット!」

礼を言うのももどかしく、その場を離れて修理されたばかりのVF-1Bを点検する天城に通信をつないだ。

(*)

3分後

自室で準備を済まして戻ると、すでに天城のVF-1Bは滑走路に待機していた。

(飲み込みが速くて助かる)

アルトは開いたキャノピーから後部座席に飛び込み、EXギアを固定した。
管理局の機体はその汎用性(ホバリング機能など)から救助作業その他のために全ての機体に後部座席が存在し、必要ならいつでも使えた。

「アルト隊長、技研行きの特急便、発進OKっすよ!」

「よし、出してくれ。」

「了解!」

天城はスラストレバーを上げると、所々被弾孔の残る鋼鉄の鳥を飛翔させた。

(*)

4分後

特急便はすでに技研に併設された格納庫で翼を休めていた。

「時間ぴったりだな。結構結構」

通信機から聞こえた田所の声に、腕時計を確認する。
1000時ジャスト。
バルキリーでなければまず間に合わなかっただろう。
安堵のため息が自然に出て、ドヤ顔を見せる天城に礼を言うと、機体から飛び降りた。

229 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2013/01/13(日) 21:05:53.14 ID:ZvRgQol5
(*)

久しぶりに見る技研は更に改装が進んでおり、もうひび割れたビルなど残っていなかった。

「ずいぶんきれいになったろ」

田所の問いに、アルトは骨組み状態の5階建てビルから目を離して同意の仕草をする。

「最初に来たときは技術棟なんて4つか5つしかなかったのにな」

「まぁな。今では大企業並の予算と設備だ。おかげで陸士部隊の装備のアップデートや新兵器の開発だって上手く行っている」

「新兵器?」

問い返すアルトに、田所は研究施設の一角を指差す。
全てが舗装された他の敷地とは違い、そこにはオフロードと呼べるほどの荒れ地─────いや、よく整備されたコースがあった。
そこを走るは、8輪で鋼鉄の身体を動かし、全方位旋回する箱から伸びる特徴的な長い筒≠備えた車だった。
それは走りながら筒を横に向けると火を吹いた。
次の瞬間には標的だったものは吹き飛び、跡形もなくなった。

「今度は『ベアトリーチェ』か・・・・・・」

アルトはもう頭を抱えることしかできなかった。
『ベアトリーチェ』とはフロンティア船団の新・統合軍、首都防衛隊の装備していた装甲偵察車である。
その身に105mm速射砲を装備していたことから俗に戦車とも呼ばれ、バジュラの初襲来時にはアイランド1で迎撃に当たった。
しかし敢えなく撃破されており、以後は対バジュラ戦には投入されず、住民の誘導や治安維持に使われていた。

「ああ、前線からの要請だ。陸士部隊の移動手段の拡充が主な狙いだ。あの砲ならV型など目じゃないし、安全性は従来のトラック輸送と比べて格段に向上する」

「しかし、ねぇ・・・・・・」

走行射撃しながら順調に標的を撃破していく装甲車は、分類上魔導兵器なのだろうが、質量兵器にしか見えなかった。

「すぐに慣れるさ」

人間は順応性が高い。最近バルキリーの運用に違和感がなくなってきたのがその例だ。
しかしこれらは果たして慣れて良いものなのか、アルトにはわからなった。

(*)

それから5分ほど歩いて着いた場所はまるで地下鉄の入り口のような地下に続く道だった。

「ところで俺達はどこに向かってるんだ?」

堪えきれなくなったアルトが、田所に問うた。

「ん? なんだ、ミシェル君から聞いてないのか。・・・・・・まぁいい、とりあえず腰を抜かさない覚悟はしておけよ」

田所はまるで宝物を見せようとするガキ大将のような笑みを浮かべると、階段を降りていく。その先には果たして、地下に入るのか?というほど巨大な実験場があった。

「ほぅ、これはすごい・・・・・・」

田所の開けたドアの先は、どうやらエンジンの実験場のようだった。
自分達のいる管制所と、土台に据えられた丸裸の熱核タービンエンジンが存在する実験場とはガラスで隔離され、安全を確保している。

230 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2013/01/13(日) 21:07:22.93 ID:ZvRgQol5
田所は何事かを研究員と話すと、何かのプラグを抜き、手渡してきた。

「なんだこりゃ?」

「とりあえず持っていてくれ」

答えるとともに彼は研究員に次々指示を出していく。

「―――――テストエンジンの反応炉、停止。―――――外部電源カット。―――――システムAからBへ移行」

研究員達は流れるような手つきでコントロールパネルを叩き、田所の指示を実行していく。

「反応炉、完全に停止。強制冷却機スタンバイ」

「全システム、モードBへ移行…完了」

次々と準備を行って行く研究員達の傍ら、アルトの目にhPa(ヘクトパスカル)表示のデジタルメーターが映る。徐々に小さくなって行く数値に、どうやら実験空間を真空近くまで減圧している事が見て
取れた。

「・・・・・・減圧完了。実験場内0気圧。理想的な完全真空です」

研究員の報告に田所の口が動いた。

「ファーストステージ開始!」

「了解、実験のファーストステージ開始します。試作MMリアクターへの魔力注入開始」

「おっと・・・・・・!」

持っていたプラグからコードを伝わって、自らの青白い魔力が流出していく。
どうやら実験に使う魔力は俺から流用しているらしい。

「俺は電池代わりかよ」

思わず悪態が口をついて出たが、誰も相手にしてくれなかった。
逆らうこともできたが、それほど多い量でもないので妨害は見送る。

「・・・・・・試作MMリアクターの作動状態は良好。実験をセカンドステージに移行します」

「テストエンジンへの流入魔力量、125M/h(マジック毎時)。炎熱コンバーター=A想定のパラメーター内で作動中!これなら行けます!」

「よし、点火!」

田所の号令一下、研究員はパネルの一際大きな赤いボタンを押した。
すると今まで沈黙していたエンジンに火が入る。

(なん・・・・・・だと・・・・・・)

それはあり得ないことだった。今あの中は宇宙空間も同然の真空なのだ。その場合、推進剤(酸素と燃料)がなければ酸化還元反応は起こらず、火など燃えようはずがないからだ。
しかしそれは青白い炎を噴射口から吹き出していた。

「出力、4分の1でホールド。現在推力は15420kgf」

「タービンの回転運動による起電力で本体反応炉が再起動しました」

「推力を最大まで上げろ」

その指示に噴き上げる噴射炎が2〜3倍に大きくなった。

231 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2013/01/13(日) 21:08:07.87 ID:ZvRgQol5
「・・・・・・現在推力64500kg!テスト段階の数値目標達成しました!」

「MMリアクター内、魔力素消費率0.02%!従来型の100倍の省エネに成功!」

沸き立つ研究員達。ここまで来て初めてアルトはこの実験の目的を悟った。
ミッドチルダ製のバルキリーは推進剤を完全魔力化しており、推進剤のタンクの替わりにMMリアクター(小型魔力炉)を搭載している。ちなみに、今は亡きVF−25改も同じである。
しかし推進器は自分が追加装備として出すFAST/トルネードパックのように、魔力素の直接噴射により推進力を得ていたので、推進効率は劣悪であった。
そのためFAST/トルネードパックのような無茶な使い方をすると10分持たない。
しかしこのように炎熱変換して炎として噴射すれば効率は桁違いだ。
簡単に言えば、今まで車を動かすのにガソリンをエンジンで燃やさず、高圧ホースでそれを後ろに噴射していたと言えば分かりやすいだろう。
だが炎熱変換はシグナムのような先天性のレアスキルの持ち主か、カートリッジ弾のように強制撃発させて制御不能の爆発を発生させるのが精一杯のはずだった。
そのため案の定というべきか、雲行きが怪しくなってきた。
研究員の操作するコントロールパネルに1つ、赤いランプが灯った。

「・・・ん?MMリアクターの出力に変動あり」

「なに?うーん、コンバーター側で調整してみよう」

「反応炉過熱中。強制冷却機、出力100%」

「─────ダメだ!変動が不規則過ぎて追いつけない!」

それが合図だったかのように一斉に赤いランプが灯った。

「反応炉、出力上昇中!安全域を超えます!」

「駆動系、ガタつき始めました!」

「強制冷却機、安全基準を突破!120%で稼動中!」

そして事態は最終局面を迎えた。



ガーッ、ガーッ、ガーッ



施設全体に響き渡るサイレン。既に研究員達が操作するコントロールパネルやホロディスプレイは真っ赤に染め上げられている。

「全冷却システム焼き切れました!反応炉の温度上昇止まりません!」

「減速剤注入、反応を抑制しろ!」

「了解。注入開始・・・ダメです!エンジン内部の減速剤、効果なし!」

「伝達系ダウン!反応炉、完全に暴走!」

「炉心のエネルギー転換隔壁、融解を始めました!」

「全電力で融解を阻止しろ!」

「・・・・・・効果なし!第1隔壁融解。第2隔壁を侵食し始めました!」

この段に至り田所はコントロールパネルに張り付くと、それを叩き割り、中のボタンを押し込んだ。
直後実験場内の外壁が開け放たれ、大量の減速剤(水)が流入した。
急流となった水流はエンジンを飲み込み、白い蒸気を吹き上げた。だが温度上昇の方が早かった。

232 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2013/01/13(日) 21:09:20.42 ID:ZvRgQol5
「温度上昇止まりません!反応(核融合)爆発します!」

刹那、眩いばかりの光が周囲を飲み込んだ。
アルトは「死ぬなら空の上が良かったな」と思ったがもう遅い。アルトの意識と肉体は、突然出現した太陽の灼熱地獄によって分子レベルにまで還元された。
















「ちっ・・・」

静寂の中、誰かの舌打ちが聞こえる。

「え?」

意識の上では既に昨日、今日とで三途の川を渡りきっていたアルトは再び現実世界へと引きずり下ろされた。

(あれ?熱くない)

一瞬で蒸発するはずであり視界は全天を白が覆っていたが、指先も足先も感覚が有り、地面にしっかり立っている感覚もあった。
田所の声が部屋に木霊する。

「コンピューター、プログラムをテスト前に戻せ」

ピッピロリッ

軽やかな電子音と共に周囲の光度が下がる。そして一瞬さっきの管制所程の無骨な壁の覆う狭い部屋となり、再び何事もなかったかのように管制所と実験場に戻った。

「ホ、ホログラムだったのか・・・・・・」

当にバーチャル(仮想現実)技術の極限とも言える完成度の高さだった。
確かにこれならプログラム次第でどんな実験でも行える。
また、地下空間にエンジンテストを行えるだけの設備を整えるのには年単位のスパン(期間)が必要になる。
となればこのホログラム施設を作るほうが遥かに現実的だった。
しかしこれほど違和感がないのは、おそらくこの施設はミッドチルダのバルキリー製作委任企業『三菱ボーイング社』辺りに本当にある施設なのだろう。
アルトが1人納得している内に、田所がコントロールパネルに指を走らせる研究員に問う。

「原因はなんだ?」

「人間側の出力変動が予想値を遥かに上回っていて、炎熱コンバーター(変換機)が対応しきれなかったんです。これから改良に入りますから試作した本物のエンジンでの
実践は─────」

233 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2013/01/13(日) 21:10:02.63 ID:ZvRgQol5
「まだ無理か」

田所は肩を落とし、ガラスの向こう(とはいえ全てホログラム)のエンジンを仰ぎ見た。

「えっと・・・田所所長、こいつをもう置いていいか?」

アルトはいつの間にか、また握られていた魔力電源プラグを掲げる。
田所は我に返ると、それを受け取り元の場所に戻した。

「すまないな。ウチ(技研)にはアレ(疑似リンカーコア)を必要出力で起動できるほどの魔力資質保有者がいないんだ」

「なるほどな。・・・あ、そういえば所長が見せたかったのはこのエンジンなのか?」

しかし田所はこちらの問いに不敵な笑みを見せると首を振った。

「いや、これからが本番さ。・・・コンピューター、アーチ≠」

すると入って来たドアと別の、現実世界への扉が現れた。

(*)

扉の先は行き止まりだった。
田所は扉の右に着いたボタン群から地下2階≠押すと、扉が閉まり、体が軽くなった。
2人を乗せたエレベーターは下降していくが、大して深く降りぬ内にガラス張りのエレベーターの壁から急に視界が広がった。
その空間は地上の格納庫ほどの広さと高さを誇り、下界の研究員と整備員達が動き回る。彼らの中心には、優美なフォルムをした白鳥が鎮座していた。

(あれは!?)

エレベーターが最下点に到達し、扉が開く。と同時にアルトは持っていた硬貨を投げる。
それは目測で10メートル、20メートルと離れるが、いつまでたってもホログラム室の見えない壁にはぶち当たらなかった。
どうやら自分の見ている光景はマジ物らしい。

「どうだ?本物だと信じるか?」

「あ、あぁ・・・」

田所の声に生返事を返しながら、アルトはその機体を仰ぎ見た。
キャノピーの後ろに突き出した2枚のカナード翼。しかしそれはVF−11のそれと違い、水平でなく斜めに突き出している。
エンジンナセルはず太く、その力強さを印象づけるのに対して、機首は一振りの剣(つるぎ)のような鋭く美しい曲線を描いている。
そして何より、その翼は鳥がそれを広げたように、大きく前に突き出していた。

「VF−19・・・・・・」

234 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/13(日) 21:12:52.00 ID:XKoeX3BI
支援

235 :代理投下:2013/01/13(日) 21:51:26.10 ID:XKoeX3BI
規制により避難
--------以下本文--------------

しかしそれはアルトが主に見たことがある新・統合軍制式採用機VF−19のF型又はS型とは違った。
前述のように2枚のカナード翼が存在し、エンジンナセル下にはベントラルフィンがある。
更に主翼も5割ほど大きくなっていた。
アルトはこの特徴を併せ持った機体を4機種ほど見たことがある。しかしそれは実物ではなく航空雑誌だ。
1つはある惑星や特殊部隊で採用された超レアなVF−19『エクスカリバー』のP型とA型と呼ばれるモデル。
2つ目は20年前、マクロス7においてパイロット「熱気バサラ」の乗機として有名になったVF−19改『ファイヤーバルキリー』。
そして最後の1機は、AVF(アドバンス・ヴァリアブル・ファイター)計画(スーパーノヴァ計画)で試作された試作戦闘機YF−19だ。
この試作戦闘機はある胡散臭い神話を持つ事から有名だ。
惑星「エデン」から地球に単独フォールドし、地球絶対防衛圏を正面突破=B当時迎撃してきた最新鋭試作無人戦闘機「ゴーストX9」を単独≠ナ撃破し、マクロスシティに鎮座
するSDF−01(オリジナルマクロス)の対空砲火を掻い潜ってブリッジにタッチダウンした。というものだ。
アルトはどんな兵装を持ってしても地球絶対防衛圏を単独で正面突破するのは不可能だと思うし、当時慣性抑制システムOT『イナーシャ・ベクトルキャンセラー』はもう1機の
YF−21にしか装備されていなかった。
そのためパイロットがどんなに優秀でも、当時のゴーストの機動に追随できたはずがない。
SDF−01も現在、モニュメントとしての要素が強く、対空砲火を打ち上げられたのかどうか・・・・・・
そのためこれは統合軍がVF−19の優秀さをアピールする目的で流されたデマだということが定説だった。
しかし実はこの歴史改変は統合軍の情報制御の成果だった。
この神話にはこの事件に大きく関わったシャロン・アップルの名は一度も出ないし、一緒に来たYF−21も伏せられている。
また当時現場にいた市民・軍属を問わずその時の記憶を失っている。となれば情報の制御は容易だった。
上記した2つの関係者を事実から抹消し、衛星に写っていたYF−19の武勇伝を誇大主張することで現実味を無くしたのだ。
しかし統合軍すら原因を正確に知らず、新・統合軍の機密事項を読める各船団の提督クラスや、それをハッキングして読んだグレイスらすらシャロンがなぜ暴走したのかは謎のままだ。
そのためこの事実を正確に知っているのは最近もエデンでYF−24『エボリューション』(VF−25の原型機)のテストパイロットをした、事件の当事者であるイサム・ダイソン予備役と
民間人ミュン・ファン・ローンの2人だけだった。

「そう、VF−19P=wエクスカリバー』だ」

田所が誇らしげに言った。


------------------
以上です。
ありがとうございました〜

236 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/14(月) 00:12:16.98 ID:64AbuzC9
乙です、PってA型のデチューンのF型のそのまたデチューンの辺境惑星防衛用モデルじゃ…

237 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2013/01/14(月) 00:32:07.22 ID:x3Wb9qBx
やっと連投規制が終わった・・・
あれ、P型ってF型のデチューンなんですか・・・!?
マクロス・クロニクルの22巻にあるVF-19Pの記述だと、ファイヤーバルキリーに近い構造って書いてあったんで、
「その分エンジンも強いんじゃね」などど根拠無く考えてました・・・

238 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/17(木) 13:15:59.42 ID:jExWQBbu
Pはデチューンではない筈だが…
正直なんでゾラに配備されたの?レベル

239 :◆ce0lKL9ioo :2013/01/17(木) 22:09:20.93 ID:AWiu2Vy6
>>225
投下乙です。
お久しぶりです。本日23時より、『リリカル星矢StrikerS』第三話投下します。

240 :◆ce0lKL9ioo :2013/01/17(木) 23:06:12.64 ID:AWiu2Vy6
それでは時間になりましたので、投下開始します。

   第三話 星と雷光と青銅と

 ノーヴェ、ウェンディ、チンクの三名は、天然の洞窟を利用して作られたスカリエッティのアジトへと戻って来ていた。
 思わぬ邪魔が入ったが、作戦目標である時空管理局地上本部並びに機動六課の制圧と、コスモと黄金聖衣の性能を確認できた。これだけの力があれば、聖王の器の確保などいつでもできる。
「くそ、あいつら!」
 しかし、ノーヴェは戦いの途中で撤退させられて、いたく不機嫌だった。ガチャガチャと足音荒く洞窟内を歩く。しかも、ノーヴェの不機嫌に拍車をかけている事柄がもう一つあった。
「おい、いいかげん降りろ!」
「やだっスよ」
 狭い通路の天井すれすれをウェンディが飛んでいるのだ。黄金の翼が羽ばたくたびに、ノーヴェたちの頭にぶつかりそうになる。
「それにしてもこの翼、いいと思わないっスか。このデザイン考えた人天才っス」
 ウェンディは陶酔したように、サジタリアスの翼に頬ずりする。
 チンクは不思議そうにウェンディを見上げた。
「前から疑問だったのだが、射手座とは弓矢を持った半人半馬ではなかったか? どうして翼があるのだ?」
 黄金聖衣が支給される際に、ナンバーズは星座の伝説も一緒に教えられている。
「細かいことはどうでもいいんスよ。ほら、こうするとキューピットみたいで、いいっスよね〜」
 ウェンディは空中で弓矢を構えてポーズを決める。
 本人は可愛いつもりなのかもしれないが、ごつい鎧で本物の弓矢を構えられたら、勇ましいという表現しか出てこない。しかも射抜くのは、恋心ではなく正真正銘の心臓だ。これを可愛いと言う奴がいたら、正気を疑う。
「知るか」
 ウェンディはサジタリアス聖衣がいたくお気に入りのようだった。ノーヴェにはどうでもいいことだが。
「あー。そんなこと言っていいんスか? ノーヴェだって気に入ってるくせに。アレンジ技なんて習得したの、ノーヴェくらいっスよ」
 ツンツンと指でノーヴェの頭のてっぺんをつつく。
 ライトニングプラズマは蹴りでもできるはずだと、ノーヴェが訓練室にこもりきりになったのを、ウェンディはしっかり記憶している。幸い、聖衣の意思に雛型の様な動きがあったので、短期間でノーヴェは蹴り技のライトニングプラズマを習得できた。
「うるせぇ」
 ノーヴェが悪態をつくが、頬を赤らめているので図星だったのが丸わかりだ。
 やがてスカリエッティのいる部屋へと到着する。そこにはすでに他のナンバーズが集結していた。薄暗い部屋を、黄金聖衣の輝きが照らし出している。
 ナンバーズの大半は、ドゥーエを興味深げに見ていた。長期の潜入任務のせいで、ドゥーエはほとんどの姉妹と面識がないのだ。
「お帰り、諸君」
 たくさんのモニターと機械を背に、白衣を着たスカリエッティが椅子に腰かけていた。優男風の容貌から、隠しきれない狂気を漂わせている。
「どこか不具合はないかね?」
 帰還したナンバーズに、スカリエッティが労わるように尋ねてくる。スカリエッティにしては、少々珍しいことだった。
 黄金聖衣を入手してから、わずかな日数で実戦投入可能にしたスカリエッティの頭脳は、天才の一語に尽きる。だが、充分なテストもなしに実戦に送り込んだことに不安があったのかもしれない。
「いえ、まったく問題ありません」
「そのようですね。取りつけた機械は正常に作動。ナンバーズの肉体に悪影響も認められません」
 ウーノが妹たちの身体状況をつぶさに調べ、そう結論づけた。もっとも不安視されていたディエチのイノーメスカノンも、数カ所不具合が出ているだけだった。これで問題点が明らかになったので、次回にはコスモとISの併用に耐えられるよう改良できる。
「そうか。だが、念には念を入れて、精密検査を行おう。その後は……」
 スカリエッティは一呼吸置くと、芝居がかったしぐさで両腕を広げた。
「時空管理局を破壊し、理想の世界を築き上げる!」

241 :◆ce0lKL9ioo :2013/01/17(木) 23:08:32.40 ID:AWiu2Vy6
 つまらない倫理観や法に縛られることなく、自由に研究を行う。それがスカリエッティの理想だった。
 そこでセインが手を上げた。
「ところでさ、ドクター。せっかく私らパワーアップしたんだし、新しい名前考えない? ナンバーズだけじゃ味気なくって」
「では、ゴールドナンバーズでどうかね?」
 間髪いれずに答えられ、セインは提案したことを後悔した。スカリエッティが名前にこだわらない性質なのは理解していたが、安直かつダサい。
 この名前は明らかに不評らしく、ディエチ、ノーヴェ、ウェンディが、セインを視線で責め、チンクが微妙に嫌そうに、トーレまで渋い顔をしていた。
「ドクター。ゾディアック・ナンバーズというのはいかがでしょうか?」
 妹たちの困窮を見かねたのか、ウーノが提案した。ゾディアックは黄道十二星座を意味する。
「それがいいです!」
 セインが声高に賛成した。こちらもそのままではあるが、ゴールドナンバーズよりはましだ。それにこの話題をこれ以上続けると、もっと変な名前にされかねない。
「では、そうしよう。これから君たちはゾディアック・ナンバーズだ」
 スカリエッティが認めたことで、ナンバーズの間にほっとした空気が流れる。
 そんな中、使う機会もほとんどない名前に一喜一憂する姉妹たちを、クアットロは蔑みに満ちた眼差しで見つめていた。

 ナンバーズの襲撃があった翌朝、六課で唯一残った棟の一室で、はやては隊員たちの入退院の手続きと、報告書の作成に忙殺されていた。
 シグナムは地上本部の現場検証に行っており、なのはは六課預かりとなった星矢たちの世話をしてもらっている。
 窓の外には、残骸と化した六課の建物たち。こうして部屋で一人黙々と作業を続けていると、はやてはまるで自分が廃墟の主の幽霊になってしまったかのように錯覚してしまう。
(あかんな。疲れとる証拠や)
 徹夜には慣れているが、今回は精神的疲労があまりにも大きく、脳が睡眠を欲していた。
 隊員たちは、非戦闘要員を含めてほとんどが負傷した。相手が手加減してくれたこともあって死者は出ていないが、無傷で済んだのは、はやて、シグナム、なのはのみ。
 軽傷の者は今日の午後には退院してくる予定だが、フォワード部隊ではギンガの負傷が酷く、復帰には少なく見積もっても数週間はかかると診断されている。フリード、ヴォルテールも同様で、大幅な戦力減だ。
 はやては書類の作成に区切りをつけると、前回の戦闘で判明した聖闘士のデータに目を通した。
 急ピッチで書かれた為、誤字脱字が散見できるが、ここはこれだけ早く仕上げてくれたことに感謝すべきだろう。
 聖衣は未知の材質で構成され、かなりの強度とわずかながら自己修復機能を持つ。魔力ダメージも軽減でき、微弱ながら意思のようなものも存在するので、バリアジャケット型デバイスと言ったところだろうか。
 壊れても再構成できないが、防御力はバリアジャケットを上回る。黄金聖衣に至っては、どれだけの強度を誇るのか、想像もつかない。
 次に聖闘士が扱うコスモというエネルギー。魔力によく似た性質を持つが、運動能力と攻撃力の強化に特化しており、射程は短いが魔力の様に撃ち出すことも可能。
 攻撃力は六課隊長クラスならどうにか渡り合えるレベルだが、問題は光速に達するスピードだ。光速の技を回避する術は魔導師にはなく、また光速で動く相手に命中させる方法もない。
「はやてちゃん」
「うん。わかった」
 なのはに呼ばれ、はやては廊下に出た。
「なのはちゃん、ナンバーズと実際に戦ってみた感想はどうやった?」
 聖闘士たちの待つ部屋へと向かいながら、はやては質問した。
「正直、一対一で勝つのはかなり難しいね。あまりにも速すぎる」
 星矢と瞬が足止めしてくれなければ、魔力チャージする時間もなく、例え発射したところでかすりもしなかっただろう。
「フェイトちゃんなら?」
「リミットブレイクを使えば、近い速度は出せるかもしれない。でも、一発でも掠めたら終わり。分のいい賭けじゃないね」
 相手の防御を抜く前に、撃墜されるだろう。そもそも真・ソニックフォームはスピードと火力で相手を圧倒することが前提であって、自分より速く固い相手をするには不向きだ。
 Sランク魔道師二名でも勝ち目がない相手が、十二人もいる。
 正式な辞令はまだだが、六課はレリック捜索から、スカリエッティ逮捕に任務が切り替わるだろう。あの強敵に――黄金聖闘士の力を手に入れたナンバーズに、再び挑まないといけないとなると、頭が痛い。

242 :◆ce0lKL9ioo :2013/01/17(木) 23:10:26.38 ID:AWiu2Vy6
「星矢君たちが協力してくれそうなのが、不幸中の幸いか」
 彼らは黄金聖衣を取り返すのが目的だ。利害は完全に一致している。
 そうこうするうちに、目的の部屋へとたどり着く。
 少し広めの部屋に、聖闘士四名が思い思いに座っていた。
 聖闘士たちは聖衣を脱ぎ、シャツとズボンというラフな格好をしていた。紫龍だけは薄紫の拳法着を着ていたが。
 皆、スバルより年下らしいが、身長もあるし、だいぶ大人びて見える。星矢と瞬が十三歳、紫龍と氷河が十四歳というのが数え間違いにしか思えない。
「私は時空管理局所属、八神はやて二等陸佐。この機動六課で部隊長をしてます」
 はやては敬礼をしながら星矢たちに挨拶する。
「星矢だ」
「紫龍」
「氷河」
「瞬です」
 聖闘士たちが簡潔に名乗り返す、
「遅くなりましたが、まずはお礼を言わせて下さい。仲間たちを助けてくれて、ありがとうございます」
「何、いいってことよ」
「ちょっと星矢、失礼だよ」
 頭の後ろで腕を組んで得意げにしている星矢を、瞬がたしなめる。助けてもらったのはお互い様だ。
 紫龍が立ち上り、一礼した。
「こちらこそ宿と食事の手配をしていただき、ありがとうございます」
「いえいえ、たいしたもてなしもできませんで」
 食堂も壊れてしまったので、星矢たちには出前を取ってもらった。
 星矢たちが助けてくれなければ、スバルとギンガ、ヴィヴィオはさらわれていたかもしれないのだ。時間が許すなら、腕によりをかけたごちそうで、感謝の意を示したいくらいだった。
 もっとも少年時代を厳しい修行に費やしていた聖闘士たちにしてみれば、充分満足できる食事内容だったのだが。
 星矢が、なのはとはやての顔を見た。
「ところでさ、あんたら日本人だろ?」
「そうだよ」
 なのはが首肯する。
「やっぱり。名前を聞いた時にピンと来たんだ。じゃあ、俺たちのことを知らないか?」
 星矢たちはかつてグラード財団主催の格闘技イベント、ギャラクシアンウォーズに出場したことがある。メディアでも大々的に報道されたので、星矢たちはそれなりに有名人なのだ。
「ごめん。私たち最近ほとんど故郷に帰ってないから」
 なのはが気まり悪げに言った。
 任務や休暇でたまに帰る日があっても、さすがに流行を追えるほどではない。俳優やスポーツ選手くらいならいいが、いずれ故郷のファッションと致命的なずれが生じないかと、なのはは密かに危惧している。
「君たちは、どうやってミッドチルダに来たの?」
「それは……」
 紫龍はゆっくりと事情を説明した。

 時空管理局地上本部襲撃事件より一週間と少し前、ミッドチルダから遠く離れた世界、1980年代後半、地球、ギリシャにて。
 アテナの化身、城戸沙織を守ろうとする星矢たち青銅聖闘士と、教皇率いる黄金聖闘士たちが死闘を繰り広げたサガの乱が終わって間もなく、白羊宮の主ムウは十個の黄金聖衣を前にしていた。
「やはり細かい傷がついていますね」
 アリエスの黄金聖闘士にして、聖衣修復師でもあるムウは、黄金聖衣を一つずつ確かめていく。
「黄金聖衣に傷をつけるとは、さすがと言うべきでしょうか」
 そのままでいいと言われているタウラスの折れた左の角と、戦闘に参加していないアリエスの聖衣は必要ないが、他は修復しなければならない。
 サガの乱では五人の黄金聖闘士が命を落とした。
 ライブラの童虎は中国の五老峰から動けず、サジタリアスのアイオロスはサガの乱以前に他界し、二人の聖衣はそれぞれの宮に安置されている。現在、聖闘士の総本山、サンクチュアリを守護する黄金聖闘士は五人しかいないのだ。
 聖衣修復の材料を取りに、ムウは白羊宮を後にした。
 それから数分後、ムウがかすかな異変を察知し、白羊宮に戻った時には、すでに十個の黄金聖衣は影も形もなくなっていた。
「これは……!」
(聞こえるか、ムウ!)

243 :◆ce0lKL9ioo :2013/01/17(木) 23:15:20.90 ID:AWiu2Vy6
 ムウにテレパシーで話しかけてくる者があった。
 バルゴのシャカの声だ。最も神に近い男と呼ばれ、普段は冷静沈着なシャカが、珍しく焦燥を滲ませている。
(天秤宮と人馬宮に賊が入り、ライブラとサジタリアスの黄金聖衣が盗まれた!)
「馬鹿な。どうやって天秤宮と人馬宮まで」
 サンクチュアリは結界に守られており、黄金聖闘士の守護する十二宮を順番に上がっていく以外に道はない。第一の宮である白羊宮はまだしも、奥にある天秤宮と人馬宮に、黄金聖闘士に悟られず侵入できるはずがない。
(気配を辿ってみたが、賊はどうやら次元の向こう側から来たようだ)
 最も神に近い男の二つ名は伊達ではなく、シャカは時空や異次元を行き来する力を持つ。さすがに単身で別世界に行くことはできないが、その存在は感じ取っていた。
 ムウたちは預かり知らぬことだったが、ナンバーズは空から侵入したのだ。鉄壁の要塞であるサンクチュアリも、空からの侵入には無防備だった。
「アテナよ!」
 ムウはサンクチュアリの最奥、アテナ神殿にいる城戸沙織にテレパシーを送る。
(ムウよ。わかっています。黄金聖衣を盗まれたのですね)
 凛とした声が応える。沙織もサンクチュアリの異変を感じ取っていた。
「申し訳ありません。このムウ、一生の不覚。かくなる上は、私自らが黄金聖衣奪還を……」
(なりません)
「何故です?」
(これ以上、サンクチュアリの防備を手薄にするわけにはまいりません)
「では……」
(黄金聖衣奪還の任務は、星矢たちに託します)
 テレポーテーションが使えるムウ、次元移動ができるシャカに、アテナの化身である沙織が力を合わせれば、星矢たちを別世界に送り込むことも可能だろう。
 だが、沙織の声にわずかに潜む苦悩の色に、ムウは気がついた。
 沙織とて、ようやく傷が癒えたばかりの星矢たちを頼るのは心苦しい。だが、サガの乱を経て、ようやくアテナと認められたばかりの沙織には、他に頼れる者がいないのだ。
 こうして星矢たち四名が集められ、ナンバーズを追ってミッドチルダへと送り込まれた。
 だが、次元移動の衝撃で、星矢と瞬は地上本部付近に、紫龍と氷河は機動六課近辺へと、別々の場所に転送されてしまったのだ。

「本当ならもう一人、僕の兄さんが来るはずだったんですが……所在がつかめなくて」
 紫龍の説明後、瞬が残念そうに付け加えた。
「なるほどな」
 はやては平静を装っていたが、内心では頭を抱えていた。
 受肉した神が実在し、人間が魔力もなしに音速や光速で技を放ち、挙句に次元移動すら行うなど、どれだけでたらめな世界なのか。聖闘士を実際にこの目で見ていなければ、一笑に付すところだ。
 いくつか気になる項目があったので、なのはが調べる為、部屋を出ていく。
 その間に、はやてはミッドチルダの説明を始めた。
 自分たちが魔道師であること、時空管理局が次元世界の警察のようなものであること、黄金聖衣を盗んだのがスカリエッティ一味であることなどだ。
「魔法か。まさか実在するとはな」
 これまで黙っていた氷河がぽつりと言った。だが、生身の人間が飛行する姿を見せられれば、信じるしかなくなる。
「なあ、もしかして修行すれば、俺たちも魔法が使えるようになるのか?」
 星矢が期待を込めて訊いた。
「残念やけど、星矢君たちは魔力を持ってへんからな」
「なんだ、コスモとは違うのか」
 星矢はがっかりしたようにうなだれた。
「お待たせ」
 なのはが戻ってくる。実家に連絡して紫龍の話の裏を取ってもらったのだが、やけに決まり悪そうにしている。おそらく姉の高町美由希あたりに、たまには任務以外で帰ってこいと、小言を言われたのだろう。こういうところは、なのはも普通の女の子だ。
「お姉ちゃんがネットで検索かけてくれたけど、ギャラクシアンウォーズ、聖闘士、グラード財団、どれもヒットはなし。お父さんとお母さんも知らないって」
 はやては自分の推測が当たっていたと確信した。
 聖闘士たちが来たと言う1980年代後半は、はやてたちが生まれるよりも前の年だ。だが、聖闘士たちが過去から来たわけではない。いくら人の興味が移ろいやすいものでも、一切の記録が残っていないというのは考えにくい。
 ならばギャラクシアンウォーズは、はやてたちの世界では起きていないのだ。
「地名、言語、文化、科学技術、歴史、ここまでそっくりなのも珍しいけど、パラレルワールドやな」
 次元の海に浮かぶ数多の世界の中には、どういうわけかよく似た世界がいくつか観測されている。特に地球という名前の知的生命体の住む星は多い。
「どういうことだ?」

244 :◆ce0lKL9ioo :2013/01/17(木) 23:18:06.73 ID:AWiu2Vy6
「つまり、星矢君の世界と、私たちの故郷はまったく別の世界ってこと」
 なのはは一応、パラレルワールドについて説明してみたが、生返事しか返ってこなかった。聖闘士たちにとってはどうでもいい話だ。
「そろそろいいだろう」
 今度の方針について話し合おうとした矢先、氷河が席を立った。星矢たちも氷河にならう。
「ちょ、ちょっと、どこに行くつもり?」
「黄金聖衣を取り返しに」
 氷河が毅然と言った。
「俺たちは、聖闘士について教えて欲しいと頼まれたから残っていただけだ。俺たちも、この世界について少しは知っておきたかったしな。それが果たされた以上、一刻も早く黄金聖衣を取り戻さねばならん」
「当てがあるの?」
「ナンバーズとかいう連中のコスモを探せばいいんだろ。とにかく足で探すさ」
 と、星矢。
 なのはは絶句した。聖闘士は相手のコスモを感じ取れるらしいが、彼らはミッドチルダ中を走り回るつもりのようだ。本気なのは、気配でわかる。
「いや、でも、勝算は?」
 星矢と瞬だって、ナンバーズには苦戦を強いられていた。三倍の数の敵にどう挑むつもりなのか。
「関係ありません。俺たちはアテナの聖闘士として使命を全うするのみ」
 紫龍が己の拳を握りしめる。
 星矢たちの戦いで、勝算があったことなどほとんどない。格上の白銀聖闘士や黄金聖闘士を相手に、圧倒的劣勢から常に命がけで勝利をつかみ取ってきた。
「でも、敵の半数以上は飛んでるんだよ?」
「跳べばいいだろ」
「跳ぶって……」
 飛行に跳躍で挑もうと言うのか。聖闘士の跳躍力なら不可能ではないだろうが、あまりに無謀すぎる。
 はやてはぽかんと口を開けた。
「なのはちゃんより無茶な子たち、初めて見たかも」
「八神部隊長も、止めるの手伝って下さい!」
 役職名を強調して、なのはが叫ぶ。ただでさえ不利なのに、聖闘士と六課が連携できなければ、勝利は絶望的だ。
 はやては自分の考えが甘かったことを悟った。
 聖闘士は魔導師とはまったく異なる種類の人間だった。打算や駆け引きとは無縁の、己の信念と正義にのみに生きる闘士たち。個人の強さを追求する聖闘士と、組織としての強さを追求する魔導師たちで、どうやって連携しろというのか。
 しかし、このまま行かせるわけにもいかない。
「まあ、少し落ち着いて。スカリエッティのアジトは、時空管理局が捜索しとる。発見を待ってから動いても遅くないと思うけどな」
 ナンバーズにコスモに抑えられたら、土地勘がない聖闘士たちは捜索手段がなくなる。
 よしんばアジトを発見できなくとも、近いうちにスカリエッティは次の行動を起こすだろう。六課にいた方が、情報は早い。
「けどよ……」
「星矢君たちの、はやる気持ちはわかる。でも、急がば回れ。必勝を期して対策を立てておくのも悪くないと思うんよ」
 聖闘士たちは黙って顔を見合わせた。
「ところで、コスモって誰もが持ってるエネルギーやったな?」
「ああ」
「だったら、私の仲間たちに伝授してくれへんかな? 今日の昼には退院する予定やし」
 はやてが両手を合わせてお願いする。
「無駄だと思うぜ。俺たちだって、過酷な修行を六年も続けて、ようやく体得できたんだ。そもそも修行についてこられるかどうか」
「それに我らはまだ修行中の身、とても人に教えることは」
「まあまあ、紫龍君。そう難しく考えんと、教えてもらったことを教えてもらえるだけでええから。聖闘士と魔導師、相互理解の一環として。な?」
「はやてさんの言う通り、当てもなく捜し回るよりはいいんじゃないかな? 今回の敵は、僕たちにとって未知の敵なんだし、対策を練るのも悪くないと思うよ」

245 :◆ce0lKL9ioo :2013/01/17(木) 23:20:53.62 ID:AWiu2Vy6
 瞬が、はやてに賛同してくれた。反論が出ないので、決まりのようだ。
「それじゃあ、先生役、よろしくな」
「……ま、しょうがないか」
 星矢は渋々頷いた。

 午後二時、退院してきたフェイトたちはトレーニングウェアに着替えると、森の訓練場へとやってきた。出迎えたなのはは、元気そうな仲間たちの姿に、ほっと胸を撫で下ろす。
 シグナムは現場検証からまだ戻っていないし、はやては別件で出掛けてしまった。フォワード隊員七名で、念入りに準備運動を始める。
「でも、ちょっと面白くないです」
 なのはから事の顛末を伝えられたティアナは、憤懣やるかたない様子で言った。
「だって、その言い方じゃあ、まるで魔導師が聖闘士より格下みたいじゃないですか」
 機動六課だって血の滲むような訓練を積んできたのだ。やりもしないで、修行についていけないと決めつけないで欲しい。
「なのはさんは悔しくないんですか?」
「百聞は一見にしかず。とりあえずやってみようよ」
 なのはがにこにこと笑いながら、ティアナを諭す。
 これまでの訓練の発案者であるなのはが、怒るどころか相手を受け入れようとしている。 スバルはなのはの度量の広さに少し感動していた。
「ほら、なのはさんもこう言ってるんだし……?」
 スバルが振り向くと、ティアナがいなくなっていた。視線をさまよわせると、ティアナは準備運動をしながら、少しずつ遠くへと離れて行っていた。
「何してるの?」
「あんた、まだ気づかないの?」
 追いついて話しかけると、逆に憐れむように言われた。
「なのはさんの表情、さっきからまったく変わってないのよ」
 スバルははっとして、なのはを振り返る。にこにこと無言で腕の筋を伸ばしている。いくらなのはが明るい性格でも、さすがにストレッチをやりながら笑顔になる理由はない。
 深く静かに怒っているようだ。そのことに気がつくと、妙な威圧感がなのはの周囲に漂っているのがわかる。
「おっ、揃ったみたいだな」
 聖衣を装着した聖闘士たちが姿を現す。
 星矢はフォワード部隊を見渡すと、ヴィータに向かって笑いかけた。
「お嬢ちゃんは見学かな? 誰かの妹とか?」
「子供扱いすんじゃねぇ! 私はヴィータ、スターズ分隊の副隊長だ!」
「副隊長? お嬢ちゃんが?」
 ヴィータが吠えると、星矢たちが目を丸くした。
 ヴィータは厳密には人間ではなく魔法生命体で、年も取らない。だが、魔法を知らない相手に、守護騎士システムをどう説明してものかと、ヴィータは頭を悩ませた。
「あっ、わかった」
 星矢がポンと手を叩いた。
「さてはあんた、魔法で若返ってるんだろう」
 的外れな答えが返ってくる。そんな魔法は存在しない。
「…………もう、それでいいや」
 説明が面倒くさくなり、ヴィータは投げ槍に言った。
「やっぱりそうか。魔法ってすごいんだな」
 星矢は興味津々でヴィータを眺める。
「で、本当はいくつなんだ?」
 ヴィータは星矢のすねを思いっきり蹴飛ばしてやった。
 
「えー。では、これより君たちに聖闘士の修行を体験してもらう」
 各々自己紹介を済ませた後、整列した六課隊員を前に、星矢が両手を後ろに回して、胸を少しそらしながら言った。渋っていたはずなのに、ノリノリで先生役をやっている。
 星矢の話は棒読みになったり、言葉がつかえて出て来なかったり、誰かの受け売りなのが丸わかりだ。なまじ得意げにしているだけに、余計に滑稽な印象を与える。他の聖闘士たちも呆れたように星矢を見ていた。
(……なんだか、懐かしいね、ヴィータちゃん)
(いや、私らはあんなに調子に乗ってなかっただろ)
 先生役を務める星矢の姿が、教官資格を取ろうとしていた過去の自分と重なり、なのはとヴィータは少しだけ和んだ。初めて教官役をやらされた時は、星矢と大して変わらない拙さだった。

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